いののん

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのいののんのレビュー・感想・評価

4.5
エイリアン降誕!


ダニエル・デイ=ルイスが全身石油まみれになった時、エイリアンが生まれたのかと思った。黒くてぬめぬめ、ぬめってる。人の体内に入り込み、人の体内から皮膚を破裂させて生まれ出るエイリアン。地下を這いずりまわり、時に空に向かって激しく突き上げる。咆哮をたてる。人を喰っちまう。


始まりは1898年。
カリフォルニアで金鉱が発見されたのは1848年だから、ちょうど50年後。ゴールドラッシュの後を追いかけるように、油田開発が進んだのだろうか。西部劇を追走していく。


そんなには喋らない男どもにかわって、音楽が鳴り響く♪ 時に情感たっぷりと、時に不協和音が。ぞくぞく・ざわざわする。生演奏を聴きながら、映画を観ているような気さえしてくる。これぞ、石油屋の“一大絵巻!” 悲劇と喜劇、ユーモアとペーソス、罪と罰、支配と被支配。


ダニエル・デイ=ルイスが本当に凄い。ポール・ダノとの演技合戦が面白くて、なんかぞくぞくする。途中から大笑いした。この作品を笑って観られるなんて、私も随分とえらくなったなあ。えっへんなのだ。


性欲がない映画。異性に対する関心がない。性欲は描かれず、その分は全て支配欲にまわってる感じ。男による男の征服。PTAが描く“オンリー・ゴッド” 俺だぜ、俺! おらおら、俺様に頭下げろや! ダニエル・デイ=ルイスがラストに放つ言葉は、勝海舟の最期の言葉みたいで、めっちゃ痛快!!! まいりました。降参します。とてもかないません。


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これは、メイキング映像があるなら是非ともみたい! 
油田開発とか、石油が吹き上がるところとか、大きな火事とか、消炎作業とか、いったいどうやって撮影したのか、ものすごく興味がある。当時のお仕事拝見としても、めちゃくちゃおもしろい。
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