ハマ

ざくろの色のハマのレビュー・感想・評価

ざくろの色(1971年製作の映画)
4.5
正直なところ評価のしようが無い。
アルメニアや宗教史を勉強するよりも絵画の知識があったほうが楽しめるかも。
一応ストーリーとしては「王妃を愛してしまった宮廷詩人サヤトは、その想いを美しい詩と琴の演奏で伝えるが、恋が叶わなかったばかりか、彼は修道院に幽閉されてしまう。絶望の淵に立った彼は・・・」といったところだが、この作品のうまみは映像美。私が映画に求めるものとすれば、感情の起伏を呼び起こすものや映像表現による絶対的な説得力といったエンターテイメントそのものであった。しかしこれを見てエンターテイメントの定義はそもそも曖昧なものだと教えられた。『ざくろの色』はストーリーは無いようなものでひたすらに完璧耽美な画で圧倒される。これは映画なのか、それとも絵画なのか。絵画の如く見せるために俳優の動きや所作が平面的に制限されているのは滑稽にも思えるが、やはり完膚無きまでの緻密な画づくりと色彩に圧倒される。絵画のような画づくりでいえばウェスアンダーソンが筆頭に挙げられるが、この作品がカルトとされる所以は時間軸の喪失とも考えられる。絵画(写真)と映像の差異は時間軸といえるが、この作品はストーリーに対するカットの使い方がナンセンスに近いために時間軸すらも感じさせない。とはいえ映像としてパターン的な動きによるダイナミックさはクセになる。動く画集を見ているかのような不思議な気分にしてくれる作品。
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