ちろる

ざくろの色のちろるのレビュー・感想・評価

ざくろの色(1971年製作の映画)
4.8
はじめはわけがわからなくても繰り返し観たくなり、結果的にはまるで魔術のように詩人サヤト ノヴァの人生に取り込まれてしまうから少々恐ろしい。
タルコフスキー、ゴダール、フェリーニ、ヴィスコンティ、ジャック タチ、ルイ マル、ベルトリッチ、ルネ クレマン・・・etc数多くのクリエーター達を虜にしたとされるパラジャーノフは想像通りの奇才、変態だった。

18世紀初頭に実在した吟遊詩人サヤト ノヴァの世界を民族音楽と陶酔的色彩の映像のコラージュで、台詞なしで詩のみで表現するという恐るべき試み。
詩人の人生を示すような、寓話的心象世界は、まるで巨大な美術館の中に迷い込んだようなトランス状態となってしまう。
ユダヤ民族のように、世界中にコミュニティを作るアルメリア人は神秘的な存在だ。
そんなアルメリア人であるパラジャーノフ監督が、幻想的なアルメリアの民族文化を監督にしかできない卓越した映像技術で捉え、観た人間はその独特な画力のパワーに屈服せざる得ない状態に押さえつける。

「かつて存在した多くのものがこの世界を理解していた。」
きっとそうなのだろう。
愚かな人間たちは様々な富を身につけてたがために人間に最も必要な富を失ってしまった。
華々しく詩人として歩みはじめたた後、死への道に向かいそれらを削ぎ落として行く姿は美しくて清らかだった。
(アルメリア バージョン鑑賞)
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