ダウンタウンの松ちゃんが好きな映画だと言う噂を大分前に聞いて、それ以来気になっていた作品。
主人公である子役の演技は芝居にこなれた子役ばかり見ている現代人から見るとぎこちなさすぎて心配になるレベルだが、その分を左卜全や北林谷栄、ミヤコ蝶々といった芸達者な役者たちの演技がフォローしているので問題はない。また倒産目前とはいえ大映の脇役陣の演技やスタッフの技術も充実しているのが素晴らしく、規模は無いもののプログラムピクチャー最後の輝きが眩しい。
子供が自分の描いた絵をもとに絵にある重要なポイントをヒントにして高知から大阪までたどり着くというミステリー的展開が面白い(大人の視点で見ると偶然を多用しているところが気になるのが難だが)。ガメラをはじめ子供メインの映画を幾つか手掛けてきた脚本家・高橋二三の力量が光る。高橋二三とともにガメラを手掛けた監督・湯浅憲明の演出も子供の視点を忘れずに、ユーモアと情を劇中でバランス良く配置して見る人に感情移入をしやすくしている。
個人的には音楽を担当する菊池俊輔の明るく分かりやすいメロディが少年時代の気分にさせてくれる、主題歌といいなんとなく『ドラえもん』っぽいのは気のせいか。
そして何といっても主人公の父親を演じる宇津井健の包容力ある演技がいつ見ても泣けてくる、細やかさはないが実直で心優しい、おおらかなキャラクターが宇津井本人とドンピシャなのだ。
泣かせの場面のあとであえて笑いのシーンを入れて映画を終わらせ見る人をほっこりさせるラストも見事。
ちなみに主役を演じた子役はのちに『必殺仕掛人』で主人公の仕掛人・林与一の子供役を演じる。