Jeffrey

ボクは五才のJeffreyのレビュー・感想・評価

ボクは五才(1970年製作の映画)
3.0
「ボクは五才」

冒頭、土佐電気鉄道を出発する少年。高知から大阪までの四〇〇kmを父を訪ねてたった一人で無銭旅行をする。大阪万博、太陽の塔、原風景のロングショット、幼稚園、スケッチブック。今、太郎は旅に出た…本作は一九七〇年に大映から湯浅憲明が監督を務めた実際の出来事を映画化(ナレーションによるとそのようになっている)したもので、レンタルがされていなかった為、角川DVDを購入して初鑑賞したが素晴らしい。高知に住む五才の幼児が、大阪に出稼ぎ中の父に会うために単独で無銭旅行した実話を基にした、日本版"母を訪ねて三千里"と言われた作品である。どうやら脚本は昭和ガメラシリーズのコンビによるもので、ナレーションは芥川隆行、オールロケで写し出される七〇年代当時の西日本の風景がなんとも貴重なものになっている。

さて、物語は南国土佐のある幼稚園。腕白坊や奥村太郎は、母は既に亡く、父は大阪の工事現場に出稼ぎ中で、祖父、祖母とともに多人数の叔父の家に住んでいた。だが、太郎にはそんな孤独な心を慰めてくれる宝物があった。それは父と旅した大阪の楽しい思い出を描きこんだスケッチブックであった。ある日、園児の一人が大阪万博の土産を見せびらかし、クラスの人気を独占した。それは太郎の胸に、父への思慕を募らせ、たった一人で大阪に行くことを決心させた。


いゃ〜、冒頭から大阪万博の太陽の塔が写し出されて、西日本の一望風景が写し出されるのは圧巻である。また、原風景な田舎町の野趣、田園のロングショットもたまらない。冒頭の子供が歌ってる歌って、主人公の子が歌っているのだろうか…なんとも可愛らしい(その子が描いた絵かはわからないが同時に流れる)。あの幼稚園児たちが歌う坂本九の"世界の国からこんにちは"がなんとも懐かしい。余談だが、その曲を俺が初めて聞いたのはガキの頃「クレヨンしんちゃん暗黒タマタマ大追跡」と言う劇場版を見て、温泉のシークエンスで敵のオバハンが歌っているのを聴いたのが初めてである。

太郎が手紙を読んでほしくて近所のおばちゃんおじちゃん、学校の先生に頼んで読んでもらおうとする健気なシーンは涙を誘う。誰もきっちり読んでくれないからって通りがかりのチャリンコに乗っている学生に読んでもらって真相を知った太郎の苛立ちと悲しみ、一方で、家族を含め大人たちは欺く事はよくないと話し合っている対比も良かった。それにしても"ごくせん"等に出演していた若き日の宇津井 健が父親役で出ていた。彼が亡くなってかれこれ六年も経つのか…早いな。
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