半兵衛

必殺の一弾の半兵衛のレビュー・感想・評価

必殺の一弾(1956年製作の映画)
4.5
拳銃の魔力に取りつかれてしまった男の苦悩を丁寧に描いた名作、冒頭で拳銃の訓練をしていたのにも関わらず周囲の人たちにそのことを隠して、早射ちのことで話題になる街の人たちにひたすら何かを言いたくなるを耐え黙々と仕事をこなすグレン・フォードの熱演とそれを見守る奥さんからこの作品はどうなるのかと目が離せなくなる。

主人公が前半で自分の秘密を打ち明けたのちも、彼や妻の態度がおかしいので腑に落ちないが、それが終盤の告白につながる展開も見事。そこから彼が単なるガンマンではない、自分の宿業と戦い続けてきた人間であることが伝わり胸を打たれる。

そんな彼と対峙する敵のガンマンも拳銃の魔力に取りつかれた人間という構図も見事で、妻というセーフティが存在する主人公に対して冒頭盲人からの忠告に耳を貸さずただ己の実力を過信してNo.1の銃の使い手として証明するため誰彼かまわず戦う男という対比も絶妙。ライバル役でよく見かける二枚目や悪役顔ではない、一見木訥な顔つきながらヤバい感をどこはかとなく醸し出す他の映画ではないキャラクター像も心に残る。そして彼が自分以上に実力を持つガンマンである男が現れたときに見せる満面の笑み!

中盤銃の腕前を封印するグレン・フォードと同時に悪党が彼の住む街を訪れたり、そんな悪党がガンマンをあぶり出すため『死刑執行人もまた死す』みたいな手口を使ったりと脚本に工夫が見られて胸がワクワクする。そして肝心の対決場面を見せない焦らしの演出にやられる。

キレのよい演出からの意外な顛末へとたどり着くラストも最高。
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