ムギ山

日本沈没のムギ山のレビュー・感想・評価

日本沈没(1973年製作の映画)
4.5
小学生のとき劇場に見に行って、その後学生時代にTV放映されたのを見て、通しで見るのはこれが3回目ではないかなあ。デアゴスティーニの「東宝特撮映画DVDコレクション」で出たときによっぽど買おうかと思ったのだけどなんとなく買いそびれて、それ以来見たいものだと思っていたのである。
記憶の中では藤岡弘・小林桂樹・丹波哲郎の映画という印象だったのだけど、あらためて見直してみると藤岡弘と小林桂樹は映画の中盤で姿を消してしまい、かわりに二谷英明・滝田裕介・中丸忠雄の官僚グループがメインに描かれる。日本が沈んで仕事のなくなってしまった彼らが船から海を眺める場面(疲れ切った滝田裕介が甲板で昏倒する)は、初見のときもとても印象的だったのを久方ぶりに思い出した。
東日本大震災を経験した今では、映画前半の大地震の場面はいかにも作り物っぽいというか、流石にわざとらしい感じが否めない。やたらと爆発があってすぐに火事が広がったり、津波のつもりかサーフィンでもできそうな高波が襲ってきたり、何よりホントの地震はあんな5分も10分も続かないでしょ(それは1分足らずの地震の間にあちこちで起きた惨事を並べて見せてるからだ、ということかもしれないけど)。ただまあこの映画(と原作)が評判になったおかげで、「沈没はともかく、つぎに地震がきたらどうすんだ」という世間の地震にたいする関心が高まり、行政の地震対策へ理解が急激にすすんだということらしいので、結果オーライではあるのでしょう。
冒頭近くの竹内均がプレートテクトニクス理論を紹介する場面(後年日本テレビが「ウルトラセブン」のスピンオフみたいなのを作ったときも、やっぱり竹内教授が出てきて地球環境問題の解説をする場面が最初のほうにあって、思わず「『日本沈没』かよ」と思ったものだった)、竹内教授の喋り方がものすごく頭のいい人の喋り方でなんかびっくりした。
島田正吾演ずる右翼の大物の世話をしている孫娘役の人がたいへん印象的。あとで調べてみたら角ゆり子という方。『二十歳の原点』の映画でデビューした人なのだそうだ。『二十歳の原点』が映画化されてたことも知らなかった。
というわけで、高度成長期に作られた作品は、終末を描いたものでさえものすごくエネルギッシュなのだった。
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