うにたべたい

日本沈没のうにたべたいのレビュー・感想・評価

日本沈没(1973年製作の映画)
3.1
日本を代表するSF小説・日本沈没を原作とする映画化作品。
日本沈没は2022年2月現在、2回の映画化、2度のドラマ化、加えてアニメ化、漫画化と、多数メディアミックスされていますが、本作はその最初の映画作品で、当時大ヒットを記録しました。

ヒットの裏側として、発表当時は戦後の高度経済成長が落ち着き、物価の異常な高騰やオイルショックなどによる経済の世界的な混乱があります。
本作では、タイトルの通り日本が海の底に沈み、住居も、生活も、何もかもが失われてしまうに至る経緯が描かれていて、そんな世の中の不安に思う人々の心に訴えるものがあったのではないかと思います。

ストーリーは、小笠原諸島の小島が突如消滅した原因を探るため、物理学者の「田所雄介」博士が、神奈川県に停泊している深海調査艇『わだつみ』号の操縦者「小野寺俊夫」、海底地質学者の「幸長」と共に、日本海溝に潜るところから始まります。
そこで3人は、異常な地すべりを発見します。
これがすべての始まりで、その調査結果を元に、田所博士は研究を進め、やがて恐ろしい未来に気づきます。
一方で、小野寺は、所長から「阿部玲子」とのお見合いを勧められます。
所長の紹介で出会った二人は、すぐに打ち解け合い、浜辺で愛を語らい合いますが、その時、巨大な地震が発生します。
その地震は230名を超える死者、行方不明者を出す大惨事となり、総理は専門家と緊急対策会議を開き、この自体の原因と対応方法について確認をします。

基本的にストーリーは小野寺を主人公として進行しますが、日本を襲う未曾有の大災害下で政府機関が対応検討するシーンの割合が多く、シン・ゴジラのように政府首脳や総理大臣である山本もまたメインとして登場します。
刻々と迫る破滅の日に対処するため、日本国民を1人でも多く救う努力をする山本首相が官邸の側から、愛する人と生き別れになってしまった小野寺が国民の側から、状況を伝えるような形になっています。

多数のゴジラ映画を手掛けた中野昭慶氏が特撮担当をしています。
また、製作が田中友幸氏ということもあってか、大地震、津波、噴火、押しつぶされる人々の特撮シーンは大迫力でした。
今のCG特撮では出せないリアリティーがあり、日本を沈没させるという大仕掛けを十分表現できていたと思います。
作中、日本に起きている出来事に対する解説が挟まり、政府の動きや、日本への被害場所や状況などもリアリティーがあって、おそらく科学的な裏付けと、綿密なシュミレートの結果なんだろうなと感じます。
地質学的、物理的な考察をする上でも楽しい作品だと思います。

ただ、個人的には、映画的な楽しさはあまり感じられなかったのは残念なところでした。
壮大な設定、リアリティーのある特撮映像、事態に対応するべく動く人々を描いていますが、正直なところおもしろかったかというと微妙に感じます。
名作だとは思いますが、ハードルを上げず"一般教養として観ておく"くらいに考えて視聴することをおすすめします。