ぶみ

日本沈没のぶみのレビュー・感想・評価

日本沈没(1973年製作の映画)
3.0
日本が沈んでいく!

小松左京が上梓した同名小説を、森谷司郎監督、小林桂樹、丹波哲郎、藤岡弘、等の共演により映像化したディザスター・パニック。
日本が海底に沈むという予測が起きたことから、パニックに陥る人々の姿を描く。
原作は未読。
地球物理学者である田所博士を小林、内閣総理大臣・山本を丹波、深海潜水艇の操艇者・小野寺を藤岡が演じているほか、いしだあゆみ、夏八木勲、村井国夫、地井武男、中条静夫、名古屋章、松下達夫、二谷英明、島田正吾といった往年の名優が集結。
物語は、日本海溝で奇妙な亀裂を発見したことをきっかけに、地震や噴火が連発、調査した結果、日本列島近傍にあるマントル流に異変が起きており、列島が海面下に沈没することが判明したため、事態に対処する政府等の姿が描かれるのだが、冒頭、今から約50年前当時の日本の日常風景が登場、国電が走り人で溢れかえる駅や、郊外のベッドタウン等が映し出されるとともに、クルマ好きの視点からすると、タクシーで通称クジラクラウンが登場していたことを筆頭に、もはやクラシックカーとも言えるクルマが当たり前のように走っていたため、記録映像としても楽しめるものとなっている。
以降、地震や噴火が様々な場所で頻発したり、石油コンビナートの爆発や、ダムの崩壊等、ありとあらゆる災難が起きるのだが、CG夜明け前の時代において、ミニチュアやセットを駆使した映像は、今のレベルからすると当然見劣りするものの、実写ならではの迫力に満ち溢れており、やはり、そこは本作品の見どころの一つ。
反面、物語自体は、それぞれのエピソードがぶつ切りとなってしまい、かつ予定調和の連続であることから、映像と比較すると、少々落ちる仕上がりになっているのは残念なところ。
そんな中でも、日本のことを真剣に考えている政府、特に丹波演じる首相は、本来、平穏に日々を過ごし、ことなかれ主義のような体質だったようだが、事態が進行するにつれ、日本の将来のために尽力するようになることから、その姿は、非常に頼もしく、トップに立つにふさわしいもの。
そのため、全体的にはパニック映画の体を成していながら、どちらかと言えば、緊急事態が起きた時に、どう対峙していくかの政治群像劇に近い内容となっている。
加えて、序盤に地殻変動について説明する科学者が、やたら説明臭いなと思っていたのだが、後から調べたところ、実際の物理学者であり東京大学名誉教授である竹内均氏であったことには、驚いた次第。
いざとなると、本当に日本のことを考えているのかが政治家には問われるのだが、不利な状況に陥ると、いつからか「~と承知しているところであり、ご指摘は当たらない」などという、わかったようなわからないような日本語を連発するようになった現代の政治家の頼りなさが際立つとともに、藤岡といしだの謎のエピソードが省略できれば、もっとコンパクトになったであろう一作。

国民の生命財産を守るとは、一体何なんだ。
ぶみ

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