たけちゃん

日本沈没のたけちゃんのレビュー・感想・評価

日本沈没(1973年製作の映画)
4.5
日本はアジアのアトランティスか!


監督:森谷司郎、原作:小松左京 1973年製作
特技監督:中野昭慶、音楽:佐藤勝
主演:藤岡弘、小林桂樹、丹波哲郎


勝手にお知らせシリーズ「今日は何の日」
本日、7月26日は小説家、小松左京の命日です。


【小松左京】
1931年1月28日、大阪で生まれる。
星新一、筒井康隆共にSF御三家と呼ばれましたが、僕は小松左京さんだけはあまり手が出なかったんだよね。文章が大人っぽく難しくて(笑)

終戦時に14歳ですから、僕の父の少し上です。
この年代の方は強烈な戦争体験の中で生き残っているので、やはり強い思いがありますね。
反戦への思いから、左傾化し、一時、共産党に入っていたというのだから独特です。共産主義者ではなかったらしく、後に離党。まぁ、当時の大学生は、みんなイデオロギーに傾倒しましたからね。

1960年代に作家活動を始めたようです。
この「日本沈没」の発表は1973年ですが、書き始めたのは1964年のこと。この年、日本では「東京オリンピック」が行われてますよね。
そして、1970年には「大阪万国博覧会」の開催。
「国民所得倍増計画」が出され、「もう戦後ではない」と叫ばれ、戦争が遠くになりました。
そうした復興の陰で、太平洋戦争を肯定する声もあったようで、それらに対する思いがこの「日本沈没」を書かせたそうです。


その反動のような70年代
公開年は1973年、関東大震災から50年、オイルショックや公害問題など多くの問題を抱えていた当時の日本で、未曾有のヒットを記録しました。
これ、今の日本の姿と重なりませんか?


「阪神・淡路大震災」では自らも被災し、復興に向けて本を記しましたし、2011年の「東日本大震災」でも同様にコメントを発表してます。「日本沈没」を著した作家としての責任を感じていたのだそうです。素晴らしいですね。
今日、小松左京が生きていたら、延期された東京オリンピックやコロナ感染症による緊急事態宣言などに対して何を語ったのかなぁと考えてなりません。

東日本大震災の起こった2011年の7月26日にお亡くなりになりました。享年80歳でした。







さて、映画です。
幼い頃、邦画で大きな衝撃を受けた作品と言えば、やはり今作「日本沈没」ですね。
タイトルのセンセーショナルな響きもそうですが、リアリティ溢れる演出も相まって、子供心に深く刻まれましたよ。ほんと、大袈裟ではなく夢に見ました!怖かったなぁ……😱

映画館ではなく、テレビで観たと思うんですが、その迫力たるや凄まじく、ものすごく自分の事として受け止めていました。


東宝特撮陣の持てる全てを結集したと思われる演出は、当時の最高峰であるのはもちろん、今見ても全然古臭くありません。
深海を走る"わだつみ"がカッコ良い!
モデルは"しんかい2000"。
本とかで色々と調べましたよね~。
深海の映像などは、当時の子供にとっては、本物だと思っていましたよ。
怪獣は出ないけど、自然災害って、怪獣以上の破壊者ですからね。もう、ここまでの東宝特撮の粋を集めた映像に感嘆です!


海って、特に、深海って、まだまだ未知の世界で、宇宙同様、ファンタジーの余地があるんです。だから、想像力がたくさん働く。

この映画を見て、大陸移動説とか日本海溝の存在なんかに興味を持ち、随分調べましたよね~。小学生だった僕に大きな影響を与えた作品です。


小松左京の原作を脚本にしたのは橋本忍さん。
黒澤組のシナリオチームだったそうです。僕の大好きな「隠し砦の三悪人」もこの方。今作の後も「八甲田山」や「八つ墓村」など次々とヒット作を書きました。素晴らしい脚本家。


本編の監督は森谷司郎さん
この方、黒澤明監督の下で助監督として経験を積んだ方。「用心棒」や「椿三十郎」に名前がありますよね。
監督としてはこの「日本沈没」の後に撮った「八甲田山」が忘れられません。こちらも素晴らしい監督です。


音楽は佐藤勝さん。
ゴジラ映画でもお馴染みですが、この方も黒澤監督とのコンビが多く、大好きな黒澤作品のほとんどが佐藤勝さん。今作も素晴らしいです!


ということで、本当に、当時の最高のスタッフが集まって作られた作品なんです。



もちろん、それは俳優も。
体を張るヒーロー的な主人公、わだつみのパイロット小野寺俊夫役が藤岡弘さん。危機に瀕しても変身はしません( ¯−¯ )フッ


日本沈没の兆候を最初に発見した地球物理学者の田所博士役は小林桂樹さん。
変わり者の学者役でしたが、好きだったなぁ。
科学者にとって一番大切なことは「勘です!」と言い切る強者(ˆωˆ )フフフ…


総理大臣役は丹波哲郎さん。
国を守る、国民の生命・財産を守るとは何なのか?と悩む姿が、推せる!
決断力が素晴らしい👏
総理たるやかくあるべし!


いしだあゆみさん、大サービスでしたね。
でも、いい所で火山の大爆発(笑)
爆発シーンは、先日観た「ジュラシック・ワールド 炎の王国」みたいだった( ˘ ˘ )ウンウン


他にも錚々たるキャスト。
面白いところでは、雑誌「Newton」の編集長としても知られる竹内均さんが本人役で登場。かなりガッツリと地震のメカニズムを説明してましたね~。当時、最新理論だったプレートテクトニクス理論を分かりやすく語っていましたよ。さすが先生、説明がお上手でした。
僕は「Newton」定期購読してたんで、おー\(^o^)/ってなりました(笑)



ラストシーンの衝撃も大きかったなぁ。
本当に起こったらどうしよう。
真剣に考えていましたよ。
決して絵空事ではありません。
来年どころかひと月先も見通せない今日。
改めて、未来のことを考えてしまいました!