ボブおじさん

フランケンシュタインのボブおじさんのレビュー・感想・評価

フランケンシュタイン(1994年製作の映画)
3.8
一説によると「フランケンシュタイン」の名の付く映画は、世界中で100を超えているという。試しにFilmarksで検索してみると次から次へと出るは出るは😅

しかし、原作に忠実な作品は、ほとんどなく、そのほとんどは見た目に恐ろしい怪物=Creatureが人々を恐怖に陥れるような類の物ばかりであった。

その点、本作は監督のケネス・ブラナー(最近はポアロの監督・主演としても有名)と共同脚本のフランク・ダラボン(「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」「ミスト」の監督としても有名)の功績により、原作にかなり忠実に作られている😊

そもそもこの怪物の名は「フランケンシュタイン」ではない。フランケンシュタインとは、怪物を創り出した学生ヴィクター・フランケンシュタインの名前であり、怪物に名前は無い。

後に怪奇俳優のボリス・カーロフが演じた怪物のビジュアルがあまりにも有名になり過ぎて、原作を読んだことがない人のほとんどは、あの怪物=フランケンシュタインと全世界的に誤解されている😅

原作の「フランケンシュタイン」は、ある意味では怪物を主人公にした教養小説とも言える。怪物は人間の営みをじっと観察して言葉を覚え、文字を学び、書物を読み、哲学を語るのだ。

この映画は、そのエッセンスを踏襲しながら、生命の創造という神の領域に足を踏み入れてしまった者に対する悲劇を格調高く悲哀に満ちたゴシック・ホラーとして再現している。

製作フランシス・フォード・コッポラ、監督・主演ケネス・ブラナー、W主演ロバート・デ・ニーロというビッグネームを揃えながらも、未だに「フランケンシュタイン」と言えば四角い頭のあのビジュアルを思い浮かべる人が圧倒的に多い。恐るべしボリス・カーロフ😅


〈余談ですが〉
1817年、ロンドン生まれのメアリー・シェリーによって「フランケンシュタイン」が書かれた経緯については、ケン・ラッセル監督の「ゴシック」やハイファ・アル=マンスール監督の「メアリーの総て」に詳しく描かれている。

無政府主義を唱える思想家ウィリアム・ゴドウィンを父に、同じく思想家であり〝フェミニズム〟の先駆者であるメアリー・ウルストンクラフトを母として、メアリー・シェリーは1797年にロンドンで生まれた。

母親は彼女が生まれた10日後に産褥熱により死去。継母との折り合いが悪かったメアリーは、15歳で親元を離れ知人の家に預けられ、16歳で詩人でプレイボーイとしても有名な妻子ある男バイロンとパリへ駆け落ちする。

翌年、第一子が生まれるが、生後間もなく逝去。その後も異父姉の服毒自殺、駆け落ちした男の妻の入水自殺などを経験した後、弱冠二十歳で書き上げたのが「フランケンシュタイン」だった。

「フランケンシュタイン」は、単なる怪物ホラー・ストーリーと捉えられがちだが、 実は誰からも愛されず孤独に苦しむ〝クリーチャー(Creature)〟の姿を描いた哀しい物語である。 その姿は、何処か波瀾万丈の人生を歩みながらも〝愛に恵まれなかった〟孤高の天才女性作家にも通じる😢

※ちなみにメアリー・シェリーは、肖像画を見る限りなかなかの美人です😅



〈さらに余談ですが〉
ここまで読んで頂いた方は、お気づきだと思いますが、「フランケンシュタイン」及び、作者のメアリー・シェリーとその両親。更には詩人のバイロンの存在は、今絶賛公開中の「哀れなるものたち」に間違いなく影響を与えていると思います😊

このレビュー内で紹介した映画を見れば「哀れなるものたち」が更に楽しめるかもしれません。