ストレンジラヴ

ベルリン・天使の詩のストレンジラヴのレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
4.0
「今僕は知っている。どんなに偉大な天使でも知らないことを」

午前十時の映画祭14で鑑賞。
再開発が進む西ドイツ・ベルリンを舞台に、人間として地上に降りることを望んだ天使の物語。
守護天使目線の映像はモノクロ、人間目線の映像はカラーが用いられている。
前半のモノクロパートはハッキリ言って勿体ぶった感じがして感情移入ができず、やや冗長に感じたが、後半のカラーパートになってからは物語が一気に活き活きしてきた。
そうなのか、人間の世界はそんなに素晴らしいのか。私はもう騙し騙され憎しみに染まった世界に嫌気すら差しているし、知らない不自由さの何がいいのだろうかと思えてしまうが。
恐らくはこういうことなのだろう。全く別の作品にこんな台詞があったのを思い出した。「確かに君は天才だ。ミケランジェロのことを尋ねれば百科事典よりも雄弁に語るだろう。だが君に分かるかね?システィナ礼拝堂の匂いが、初めてミケランジェロの絵画をその目で見た感動が。愛する人が病気になって、病院でつきっきりになって手を握る。面会時間はとうに過ぎているが医師も看護師も誰にも止めることができない。これが分からないのならば、君はただの臆病な子供だ」。
百聞は一見に如かず、守護天使は全ての声を聴ける代わりに当事者として物事を見ることができない。その中を時間の概念もなく永遠に漂い続けることは、実はとてつもない苦痛なのではないか。だからモノクロパートが冗長で、カラーになった途端に活気が出てくるのは当然のことなのだ。かつての名ピアニストの言葉を借りるならば「鍵盤は88鍵と決まっているから弾けるんだ。無限の鍵盤は僕には弾けない」といったところか。
いちいち言い回しが難解だったので疲れたが、最後まで観てよかった。