よーだ育休中

インビジブルのよーだ育休中のレビュー・感想・評価

インビジブル(2000年製作の映画)
3.0
国防総省から【人間を透明化させて障害なく元に戻す】という極秘プロジェクトを委託された科学者Sebastian(Kevin Bacon)率いる研究チームは、霊長類を用いた動物実験まで成功させる。しかし〝ここまで築き上げた計画と手柄を取り上げられるのではないか〟と懸念した彼は、虚偽の報告を行い自らを実験台に人体実験へと踏み切ってしまう。


◆透明(になったクズ)人間のお話

動物実験でうっすらと危惧されていた《凶暴化という副作用》と《人間性が欠落している》Sebastian。この二つの懸念事項が禁忌の人体実験によって現実化してしまった事で引き起こされる惨劇を描くサスペンス作品でした。混ぜるな危険の相乗効果ですね。

透明人間と生活を共にする事の薄気味悪さというよりも、扱いに難渋する男が透明になってしまってさぁ大変。といった所でしょうか。研究チームの皆様方の気苦労、お察しします。ただでさえ気難しいリーダー格が自分勝手に研究を推し進めて、トラブルが起きると逆ギレして、チームメンバーの気も知らずに好き勝手振る舞う。大きな子供の我儘を見せられているかのような作品でした。

透明化したままの彼が(非行少年の様に)夜分勝手に研究所を抜け出して行った事といえば、《子供をビビらせた事》と《気になっていたお向かいさんのレ●プ》だけ。クズすぎるな。


◆ 高度なVFX技術

冒頭からグッと引き込まれる映像(セクシーな隣人さんのお着替えシーンではない。)で幕を開ける今作。元気に走り回っていたネズミが何かにつかまれた様に体がくびれ、宙に浮き、食いつかれる。(さすが監督。血糊の量は多めである。)

サーモグラフィー映像を駆使したり、透明になっている動物や人間を視覚化する工夫が凝らされていました。特殊な血清によって体が透明になっていく過程(その逆もまた然り)は特に印象的。皮膚→筋肉→内臓→骨格と体表面から順に消えていく様子はクオリティも高くて今作を象徴するシーンだったと思います。

今作の肝であるキモい科学者が透明になってからも、見えない彼がそこにいるかの様なカメラワークや、一人でに動き出すアイテムなど工夫されていたと思います。サーモグラフィー越しにも彼の息子さんがプラプラしている様子が見てとれるほどの拘りは流石。脱帽ですわ。こんなん見せられても嬉しくもなんとも無いけどな。


◆ Verhoeven節を感じる作風

今作でメガホンを取ったのは【トータル・リコール】のPaul Vevhoeven監督。小学生の頃に一度観ていて、うっすらと記憶がある状態での再鑑賞だったのですが、この度冒頭で監督がVerhoevenだと知り妙に納得しました。

【トータル・リコール】や【氷の微笑】ほどではないにしろ、改めてバイオレンスな描写やセクシュアルな表現は多めに感じました。輸血パックを大量にぶちまけちゃう程の出血大サービス。血糊もふんだんに使用されています。

歯切れの悪いエンディングではなくて、しっかりとラストまでわかりやすく描かれている部類だったので、《透明人間》をテーマにするんだったら含みを持たせた薄気味悪い終わり方でも良かった気はしました。(そうすると、この自己顕示欲の塊が生き残っている事にしないといけないジレンマはあるのですが。)