子持ちのカイロレン

日本侠客伝 血斗神田祭りの子持ちのカイロレンのレビュー・感想・評価

日本侠客伝 血斗神田祭り(1966年製作の映画)
3.5
 シリーズ第四作。大正時代のいろんな職業を覗けるのもこのシリーズの楽しみで、今作は神田を舞台に消防団員たちの活躍が描かれる。といっても万引き犯を捕まえたり警察の補助的な役割が日常的な仕事。消えゆく昔気質の仕事人への挽歌になっている。
 浪花篇のラストで一瞬だけ登場した藤山寛美が今回はメインキャストに登場。口も動きも本当達者。マキノ雅弘監督も演出いらずだったようで、かなりアドリブ多いんじゃないだろうか。中原早苗さんとの絡みも楽しい。コメディリリーフを藤山寛美に譲った長門裕之は片目が潰れた渋い役で登場。でもどうしても可笑しさが滲み出てくる。今作、次作と珍しくこの路線。その他の見どころは撃たれても斬られてもなかなか死なない鶴田浩二の死に様。駆けつける健さん、汽車に乗る野際陽子の合計三度のカットバックの時間、ひたすら斬られ続けるしつこさは凄いけど笑ってしまう。
 冒頭ヤクザに道を譲った健さんに、最後にはみんなが道を譲る。このことからも分かるように健さんが己の道を一本通す話だと思うのだが、メインとなる藤純子との絡みでは態度が曖昧で、鶴田浩二と野際陽子の駆け落ち恋愛物語の方が遥かにドラマチック。そのせいでどこか作品全体の掴みどころがない印象になってしまっているのが残念。