あんがすざろっく

エイリアンのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

エイリアン(1979年製作の映画)
4.8
リドリー・スコット作品をレビューしようシリーズ。

10月に試験を控え、ただでさえ努力や向上心に無縁な人間なので、自分に負荷をかける為に映画はしばらくお預けにしようと決心したものの。
だんだん勉強にも身が入らなくなり、こうなるとどこかでリセットが必要。
やっぱり我慢は良くない、たまには映画を見ようと。
頭の中をすっきりさせる為に、自分にとって衝撃になった作品を見ようと、本作をチョイス。



1977年(日本公開は1978年)、映画界には「スターウォーズ」が登場し、スクリーンに映し出される巨大な戦艦、宇宙を駆け巡る冒険アクションに、多くの映画ファンが魅了されました。
僕は公開当時見れてないから、後年の特別編をスクリーンで観ましたが、冒頭のデススターの迫力に度肝を抜かれました。
また同年、スピルバーグは「未知との遭遇」を発表、異星人との友好をじっくりと描き、今現在のSF映画というジャンルが浸透する土台は、ここで出来上がったのだと思います。

そして2年後の1979年、SF映画は更なる境地へと足を踏み入れます。






宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない。

これを劇場の真っ暗闇で観ることになった観客は、それこそ悲鳴をあげたかったに違いありません。
リドリー・スコット監督の劇場作品2作目にして、出世作。


分かってても、直視できない。
めちゃくちゃ怖いんですよ、繭を見つけるシーン。毎回心臓バクバク。
ここからが、恐怖の始まり。

それまで僕は、予告で見るだけでもホラーが駄目だったので(ホラーコメディとかならまだ大丈夫だったけど)、本格的なホラーを見たのは、本作が初めてだったかも。
怖い怖いと思いながらも、意を決してビデオを再生。

リドスコ信者に成りたての頃だったんで、僕にとってはこれはもうリドリー御大の成せる業です。
とは言え告白してしまうと、初回の時はあまりの怖さ故、先の繭のシーンとか、チェストバスター登場のシーンは早送りしてましたけど😱

作品が誕生するまでは、随分苦難の連続だったそうですね。
当時まだ無名だったダン・オバノンが原案を書くも、なかなか脚本にまで仕上がらず、ウォルター・ヒルが監督をする話もあったようですが、最終的に「デュエリスト」でデビューしたばかりのリドリー・スコットに白羽の矢が立ちました。

リドリーが得意とする「闇の映像美」と、H.R.ギーガーの手によるエイリアンのデザインが、悪夢的なまでに融合し、SFエンターテイメントに沸いた映画ファンを、今度は宇宙を舞台に恐怖のどん底へと引きづり下ろしたのです。

エイリアンの有機質と無機質が混同した姿は、宇宙船のどこに潜んでいるのか分からなくて、暗い中だと本当に怖くて(全体像がはっきり見えないから余計に怖い)、リドリーとギーガーあってこそのホラーです。

今見返すと、ビックリする程怖かったのは、前述の繭のシーンとチェストバスターのシーンぐらいで、エイリアンが襲ってくるシーンなどは、ジワリジワリと描かれているので、ジャンプスケアがあまりなかったから僕は大丈夫だったのかも知れません。
しかし、シンプルな中に緊張感が漲っていて、スリラーとしても上質な作品だと改めて思いました。


公開当時、日本では「エイリアン」という言葉自体は「外国人」という意味が主要だったようで、本作で完全に「エイリアン=異星人」というイメージが植え付けられ、これから後は「外国人=フォーリナー」という言葉が使われることが増えたようです。
(スティングが「Englishman in New York」で「I'm an alien」と歌ってるのは、よそ者、外国人って意味ですね)




さて、キャストに移りますが。
「エイリアン」と言ったらこの人は切り離せない。
ヒロイン、リプリーを演じたシガーニー・ウィーバー。
なんだかヒロインって響きが、ヒーロー(主人公)を引き立てるキャラクターに聞こえてしまって、そこに違和感を感じてしまう程です。
パート1では、エイリアンから逃げる一方のイメージがありますが、男連中ばかりのノストロモ号の船員達を引っ張っていく姿は、やっぱり勇ましい。
終盤の下着姿もセクシーでした。

船長ダラスを演じたのがトム・スケリット。
頼りがいがありそうなんだけど、会社の命令には逆らえないやるせなさも滲みでてます。

ケインを演じたジョン・ハート。最初の惨劇の餌食になってしまいます。
あれはある意味でなぶり殺しだな…。

アッシュを演じたイアン・ホルム。
このキャラクターは出色でしたね。
パート2への伏線にもなっていて、結局異星人より怖いのは…。
 

撮影時、キャストにはチェストバスターが登場するシーンは全く説明されていなくて、あのシーンでのキャストのリアクションは本物だったようです。

デザインで言うと、ノストロモ号も素晴らしい。
宇宙船というよりも、大きな工場が宇宙を移動しているような。

僕が本作で一番好きなのは、実はオープニングタイトルです。
本当にカッコよくて、さすがはデザインを勉強していたリドリー御大、最初から心を鷲掴みされました。
デ・パルマの「アンタッチャブル」と本作のオープニングタイトルは、今まで見てきた映画でダントツに好きです。


余計なものは足さず、洗練された作品。
リドリー・スコットの代表作に相応しい、クラシカルなホラーです。


このままエイリアン2も見たいところですが、それはまたいずれ。
気持ち入れ替えて勉強せねば。
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