海

エイリアンの海のレビュー・感想・評価

エイリアン(1979年製作の映画)
-
一昨年の五月、広島で開催されていた猫の美術展に行った。中世ヨーロッパでの猫への迫害について、知っているつもりだったのに何も知らなかったことを思い知った。時間と言葉をさらっていった数時間だった。ゴッホの絵もフジタの絵もあった。帰りに自分の猫のことを思い出しながら、手帳に絵を描いていたことをよく覚えている。わたしが猫たちの暗黒の歴史に、まっさきに結びつけた映画が『エイリアン』だった。なぜ?どこが?と思うひとも居るだろう。でも、猫と女性を語るときにこれほど最適な映画はほかにない。猫が出てくる印象的な映画は多くあるけれど、これを超える、猫という生物とのロマンスを描いた映画もほかにはないかもしれない。ホラー映画の界隈では、「ファイナル・ガール」という概念がある。わたしがホラーを愛する大きな理由でもあるこれは、殺人者と対決し最後に生き残る女性のことを指す言葉だ。この言葉がここまで似合ってしまい、わたしを抱いて離さない映画も、きっとほかにはない。あとは観て感じてほしい。そういう視点で本作を鑑賞できるひともいるだろうし、また、できないひともいるだろうから。ログインではじけていくからだ、スリープでしずんでいく意識、たどり着くべきステージまであなたが導いてくれるそのサイン。リプリーがジョーンズを酸素ボンベみたいに抱きしめるのと同じように、わたしも猫を抱いたことがある、そのかさなりが、いつもわたしを強くしてくれる。叫んでも叫んでも届かないメーデーがいま子守唄になる、くるりと眠りについた神さまの子ども、いとおしいぬくもりを分け合ううつくしいわたしたち。「おやすみ」の代わりに「さよなら」を告げる。あなたの名前で封をして。いとしさよ、希望よ、温もりよ。宇宙より、愛を込めて。
海