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裏ゴト師のminamiのネタバレレビュー・内容・結末

裏ゴト師(1995年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

パチンコ台のプログラマーだった狩野(藤竜也)が無実の罪で逃亡生活を余儀なくされ、カバン屋(パチンコ台のチップを操作する裏業者;別名「ゴト師」)に身をやつしながらも真犯人を追うという物語。刑事として狩野を追う山辺を演じるのが菅田俊さん。今回も菅田さん目当てで観ました。(40歳の菅田さん…かっこよかったです)

菅田さんファンとしては、今回は(暴力的ではあるものの)善良な刑事役だったということと、妻子とのキュンキュンシーンがあるところが最高でした。
不安になった妻がそっと後ろから菅田さんに抱き着き、それに対して「どうしたんだ?」って怪訝そうに振り返り、それからちょっと心配そうな顔をするところとか、めちゃよかったです。(奥さん不安がってるんやから抱きしめろやぁぁぁ!!とは思いましたが)娘をニコニコ顔で抱き上げるシーンなんかも最高でした。ほんと素晴らしいシーンをありがとうございました。

以下、完全にネタバレです。
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真犯人は、狩野が親友だと思い込んでいた同期の神崎(寺尾聰)。動機は優秀なプログラマーであり幸せな家庭を築いている狩野への嫉妬。神崎は狩野に無実の罪をきせただけではなく、狩野の妻・洋子にも嘘を吹き込み離婚させ、狩野から家族をも奪う。

最終的に神崎と、裏で糸をひいていた弓削署長や巨大パチンコチェーン「ゴールド」の女社長は逮捕され、ハッピーエンドと思いきや、神崎は黒幕の政治家と繋がっていたためすぐに釈放される。最後の寺尾聰さんの不敵な笑みがなんとも印象的でした。

そして、真実が発覚した後の、狩野、洋子、山辺…三者の心境を思うと本当に複雑な気持ちになります。

狩野に未練を残しつつも離婚し、刑事の山辺と再婚した洋子。(逃亡犯の妻と現職刑事が結婚できるのか?ということは考えてはいけないw)山辺との間には愛情もあっただろうけれど、夫が犯罪者となり失踪してしまった中で、子供を抱えて生きていくための選択だったはず。

当時小さかった娘リサは山辺を実の父親だと思って育っているし、山辺はリサを大切に可愛がってくれている。しかもお腹の中には山辺の子がおり出産間近。そんな引き返せない状況下で、実は狩野は離婚を望んでいなかったと知らされるなんて。「私は離婚したくなかった…ずっと待ってるつもりだった…」と大きなお腹を抱えて頽れるシーンは痛々しく、見てるだけでお腹が張りそうになりました(妊娠後期、お腹が張りがち

そしてそれを目の前で聞かされているのが山辺!山辺ですよ!!
山辺にとって狩野は、罪を犯して失踪し(←誤解1)、一方的に離婚をつきつけ(←誤解2)、さらに洋子を付け狙う(←誤解3)極悪非道な犯罪者。その狩野から洋子を守りたいという思いで洋子と結婚し、連れ子のリサを大切にし、もうすぐ子供も生まれるのに、すべてが誤解だったとか、実はお互いまだ愛し合っているとか、目の前でそんな事実を突きつけられるなんて…。

「だまれ!どういう経緯があろうと洋子は俺の女房だ!俺が俺の手で守る!」と狩野に殴りかかるシーンは、「え?今までの話聞いてました?」と思いつつもw、切なすぎました。(その直後に身重の洋子さんのこと「どけー」って突き飛ばしてたけどww

神崎を捕まえた後の狩野との最後のシーン。山辺は狩野に「洋子は今八か月だ。あと二か月もすれば俺の子を産む。」とそれだけ告げるんですね。狩野も何も言い返さない。狩野と洋子の間にまだ強い愛情が残っていることを知ってしまった山辺。洋子と山辺を繋ぎとめるものは結局子供、ただそれだけだと自白しているようにも思えます。

そして、自分への疑いは晴れても、家族も仕事もそして「親友」も奪われ、何も残らない狩野。

狩野、洋子、山辺…何も悪くないこの三人のこれからも続く苦悩と、一人安全なところで不敵にほほ笑む神崎…。全体的にコミカルに描かれつつも、決してハッピーエンドでは終わらないところが面白かったです。
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