前方後円墳

雨上がりの駅での前方後円墳のレビュー・感想・評価

雨上がりの駅で(1996年製作の映画)
3.0
アルツハイマー症のコジモ(ミシェル・ピッコリ)を尾行するコラ(アーシア・アルジェント)のロードムービーだ。
その日暮らしのコラは何かに諦めているわけでも、自分の存在を否定しているわけでもない。ただ、自由である彼女が自由の中で自分の存在そのものが薄れていきそうな死の恐怖をトラウマとして絶えず抱いているのだが、この旅で彼女は自分の内面と向き合うことになる。
コジモの奇行に振り回されるコラは彼を置いて帰ろうとするが、偶然がそれを阻む。その偶然は決してご都合主義的なものではなく、あくまでも自然に当たり前かのような流れがある。そしてコラが成長物語として、コジモの存在はきっかけにすぎず、常識が通用しないコジモに対して彼女は自ずと自らの心を剥き出しにせざるを得ない。そこから彼女が起こした行動、他に出会った人とから自分の心が裸だということを知り、自分を整理することになる。そしてそんな彼女の心の傷を雨は流そうとする。
ラストシーン、雨上がりの駅で微笑む二人はとても美しい。