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πのmのレビュー・感想・評価

π(1997年製作の映画)
4.0
文学は大事だ。と教えてくれる作品。数学にロマンを求めるあまり文学的思考が出来なかった主人公マックスが愛おしい。数学の作品なのに文学的で面白い。

私のアイコンはダーレン・アロノフスキー監督『マザー!』のジェニファー・ローレンスさん。『マザー!』大好きな私にとって監督の初期を観られるのは嬉しいことだ。『レクイエム・フォー・ドリーム』『ブラック・スワン』も大好きです。初期から変わらずキレていてとてもいい笑

今作は天才が天才ゆえに狂っていく様をコントラストの高いモノクロで魅せてくれている。「世界に存在する事象のすべてはそれぞれ一つの数式で理解できる」というマックス(ショーン・ガレットさん)は216桁の数字に取り憑かれていく。
凄くいいなぁ、と思ったのは観客にいっさい説明する気が無かったこと。天才が天才なのはなぜだろうかという天才の日常を淡々と描いていて、近寄り難い作風になっている。それが既に《他者とコミュニケーションが取れない》マックスらしさを表していた気がする。

今でもπの研究がなされていて、3.14159…の最後が更新されている。私はあまり数学が好きではないが、ロマンは感じる。マックスが作中で言うとおり世界共通であり美術、美しさの概念にまで数字が用いられている。

マックスは天才がゆえに出来ないことも多い。引きこもり、他者とコミュニケーションが出来ない。とりわけ、文学的な思考が無かった。凄く詩的な想像をしていて、狂うというある種イメージの世界に囚われていたのにそれを数学でしか表現出来なかった。違う言い方をするなら文学を数学でしか表現しなかった。
マックスは狂うということの感情表現・言語化が出来ていない。それが天才ゆえの偏りで面白かった。

手持ちのカメラでぶれぶれの撮り方、スピード感がありよかった。また音楽もかっこよく初期作品らしくとんがっていて素晴らしい。

囲碁の石の音っていいよね。昔、囲碁の石をばら撒いて遊んでいたのを思い出した。

ストーリー : ★★★★☆
映像 : ★★★★★
設定 : ★★★★☆
キャスト: ★★☆☆☆
メッセージ性 : ☆☆☆☆☆
感情移入・共感 : ☆☆☆☆☆
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