三隅炎雄

底抜けいいカモの三隅炎雄のレビュー・感想・評価

底抜けいいカモ(1964年製作の映画)
4.4
ディーン・マーチンとのコンビ作はテレビでよくやってたからそれなりに見てるんじゃないかと思うけど、ルイス単独作は『大学教授』くらいしかまともに見たことなかった。で、これ。可笑しくはないのだが、なにやら病んでいて気味が悪く、奇っ怪な面白さで最後まで見せてしまう。ピーウィー・ハーマン映画の先輩みたいなもの? たけしの『監督・ばんざい!』みたいな、欽ちゃんの『俺は眠たかった!!』みたいな、それらの先輩格みたいな。

有名喜劇俳優が旅客機事故で死亡、それまで彼を支えてきたスタッフたちは喪失感に耐えられず、揺らぐアイデンティティを維持するために、たまたま部屋に来たホテルマンのルイスを雇って、新しい喜劇スタアにでっち上げようとする。しかしルイスにはコメディアンとしての才能が決定的になく、スタッフ一同は気が狂いそうになる。これが悪夢でなくて何であろう。

監督・脚本のルイスは、自身が演じる才能のないコメディアンがすべり続け、誰も笑わない状況を延々と撮る。しかもルイスがやってることのレベルはいつもと大して違わない。見ていてこちらの頭がおかしくなる。こんな異様な喜劇映画があるだろうか。潔癖症的な画作りが喜劇らしからぬ感覚で見るものを不安にさせる。

今回は毛を扱った奇怪なギャグが2つ、心の傷を感じさせて印象に残る。どう反応していいか戸惑う。
三隅炎雄

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