宇尾地米人

勇気ある追跡の宇尾地米人のレビュー・感想・評価

勇気ある追跡(1969年製作の映画)
-
"TRUE GRIT"は「真の勇気」とか「本物の度胸」といったところで、それは観ていくうちによく分かってきます。男映画の大将ことジョン・ウェインが62歳でついにアカデミー主演男優賞を受賞した。これまで多くの名作で痛快な活躍、堂々とした逞しさ、男の感傷を演じてきたウェイン。この映画では、お父っつあんを殺されて犯人を追い詰めたいという娘さんに手を焼く姿を見せました。下手な誤魔化しが出来ないくらい言いくるめられて、困るところ。孤立していた男が若者たちとあーだこうだと旅をしながら、ついに悪党たちと大対決してみせる、それが凄かった。

隻眼の鬼保安官。若いテキサス警備隊員。復讐の決意固める娘さんの、騒々しい道中記。「子どもは連れていけないよ。残っていなさい」といっても「イヤよ。私も絶対に行きますから。父の仇を絶対に引っ捕まえてやる」と返してくる。男2人は娘さんの気の強さ、復讐心は買ってやりたいが、出来れば野蛮なことに関わらせたくないという気配りを見せます。それが段々と立派に思えてきて、少しずつ認めてあげるところ。こういう人間描写。共演の活写が、この冒険西部劇の面白いところでした。鬼保安官のマイペース。警備隊員の若さと前向きさ。お転婆娘のエネルギー。なかなかクセのあるトリオになって、まあ騒々しくて退屈知らずだ。ソリが合わなかったり、少し調子を合わせてみたり、旅の歩調というやつでしょうか。そういう描写が良かった。

3人で一生懸命、悪い奴らを追いかけて、とうとう見つけ出した。いよいよどんな対決して見せるか。この映画の山場になります。このときのウェイン。ひとりで4人を相手して見せる。手綱を咥えて、右手にライフル、左手に拳銃を構えて、突進していくところ。ライフルのスピンコック。シュワルツェネッガーが、『ターミネーター2』でオマージュしてみせました。あの有名な、銃をくるっと一回転させて装填するテク。それをやってみせた。この大決闘で。ウェインは年をとっても、闘い続けました。男を見せることを演り通した。なぜ彼が永遠の映画スタァなのかがよく分かります。男の孤独、男の勇気、魅せる闘いを生涯演じ続けた。アメリカはもちろん、世界中の映画ファンをしびれさせた。
宇尾地米人

宇尾地米人