ノストロモ

ゴーストワールドのノストロモのレビュー・感想・評価

ゴーストワールド(2001年製作の映画)
4.5
20年越しで日本版ブルーレイが発売されたので久々に観賞。
当時は自分も若くてイーニドに共感する部分が大きかったが、今見ると彼女は彼女で結構にべもなくさしのべられた手を振り払う、若さゆえの傲慢が目に付く。

だけどそれでも彼女はやっぱり特別。
イーニドが素晴らしいのは自分の嗜好にあうものには結構まっすぐに愛情表現をしていて、つまりただの逆張り野郎とは全然違う、本物の趣味人であるところ。しかも本作はそんな彼女のセンスの良さがあらゆるシーンにこれでもかと満ちているのに、不思議と全体としては押しつけがましい感じがなく、あくまでもサラリとした印象なのがまた良い。
そしてこのイーニドの魅力が非常にスムーズに描けているからこそ、彼女と既存の社会との齟齬もまた説得力をもって浮かび上がってくるという絶妙な構造の妙。その魅力と引き換えの孤独が織りなす繊細なバランス、切なさこそが、数多い迷える青春を描いた映画の中でも本作を一歩特別なものに押し上げている。
それこそイーニドが好む、技術的な難しさは無いのにいざコピー演奏してみると同じような雰囲気が全然出せない昔のパンクバンドみたいな、タイムレスな魅力に包まれた作品。

それにしても「あなたみたいな人がモテない世界が許せないのよ」って、これほど自身の意志表明と他者への肯定が素敵融合した言葉、他にあるだろうか?これには地球上に数多いる全ブシェミが泣いたし、これからも泣くだろう。

ソーラ・バーチのスタイリスト、毎回見ながらエンドロールで捜そうと思うけど、毎回忘れる。全服安っぽくてキッチュだが、次のシーンの服装がこんなに楽しみな作品は他にない。何度見ても毎回楽しい。
あとスカヨハのハスキーボイスも毎回最高だと思うけど、見終わると毎回忘れている。
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