シズヲ

ゴーストワールドのシズヲのレビュー・感想・評価

ゴーストワールド(2001年製作の映画)
3.0
モラトリアムから抜け出せない女の子のポップな放浪。この映画はポスターだけ見るとソーラ・バーチ&スカーレット・ヨハンソンのW主演に見えるが、実際はバーチだけが主役だしスカヨハは脇役っぽい。レベッカは割と早々に就職するが、イーニドは延々と根無し草のままである。むしろ冴えないマニア系中年男性のブシェミこそが準主役めいている。やさぐれ少女コンビの物語を想定していただけに正直この時点で拍子抜けなところはあるけど、名優ブシェミはやっぱり好演なので何とか許せる。

本作の肝は間違いなくイーニドだけど、正直彼女が終始に渡って好きにはなれないので今一乗り切れなかった。モラルもデリカシーも無い嘲笑的な挙動を繰り返す彼女に好感を抱くタイミングが見出だせないまま物語が進んでいく感。イーニドの情緒に振り回されるブシェミも何だか可哀想になってくるというか、惹かれるセンスのない“理由なき反抗”に共感するのは正直難しい。たまに見せる悲壮感もあからさまに感傷的すぎて余りピンと来ない。撮影や編集などの演出的な魅力もそんなに無いので、映画に没入できるだけのフックを掴めなかった。

とはいえ“大人になりきれない10代女子のとんがった迷走”という本作の題材が刺さる層も確かに居ることは伝わってくる。サブカルなファッションで常にバシッと決めてるイーニドのビジュアルは間違いなく魅力的。彼女が体現するモラトリアムの鬱屈、苛立ち、不安も印象的である。ブシェミもそうだけど、オタク的嗜好で噛み合えないことのもどかしさは理解できる。そういった感性をポップ&サブカルな作風に乗せて描いていることに意味はあると思う。まぁ自分はあまり乗り切れないまま終わってしまったので、ちょっぴり寂しい。
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