あなたのやさしさを何に例えよう

ゴーストワールドのあなたのやさしさを何に例えようのレビュー・感想・評価

ゴーストワールド(2001年製作の映画)
4.5
かわいい映画だった。
自分がされて嫌なことは人にしないようにしましょう、という作品。
音楽も良かったし、二人のファッションも最高だった。緑に染めた髪の毛も。

サイケデリックなインド産ロックンロール。
オープニング最高だったな(台風クラブをちょっと思い出した)

いたずらで呼び出した男をニヤニヤしながら見る。寂しげな姿に胸が痛む。

シーモアで埋め尽くされたスケッチブックの後ろのページ
人からこんなにも思ってもらえるなんて、これほど幸せなことはないよなあ。
「あなたは私のヒーロー」

廃線になったはずのバスに乗る老人。
そしてイーニドもあのバスに。
”ゴーストワールド”ってそういうことか?どっちがゴーストワールドなのだろう。バスが行く先か、それともこれまで行きてきた町か。

あのバスが連れて行ってくれる場所はどんな所だろうか。
バッドエンドだと思いたくない。イーニドがたどり着く先が、幸せな世界だったら良いな。

社会に出て型に嵌まるレベッカは、前半と後半で全然違う人間になった。自立した一人の女性になった。

イーニドの素晴らしさが、この世界にいては消えてしまう。

ヌンチャク男が最高

ビデオショップの雰囲気が良かった。大きな棚に各作品のジャケット。DVDとはちょっとちがうなあ。

新聞が楽しかった時代。個人広告でデート相手も募集するのか。日本でもあったの?
アパートも新聞で見つける。

現代の私たちが2000年代初頭の本作を見る。
その本作の登場人物たちは、さらに昔のレコードやビデオを聴く。

↓が好き
・ジョシュが驚いてアイスを落としたら、アイスを待ってた女の子が泣くシーン
・美術館でカメラが観客にフラッシュを焚いて次のシーンに移る演出
・セックスのシーンで映るカウボーイの雑貨

◎どうしてシーモアは運転中だけ性格が変わるのだろうか?


以下、他の方の感想でメモしときたいこと
・このエンディングが2001年当時のアメリカにあって何を意味していたのかはわかりません。ただ、希望的なものということはないでしょう。きっと、この映画のつくり手たちの、失われていくものへのノスタルジー、そこには青春というものも含まれますが、シーモアをヴィンテージ物のコレクターにしたり、廃線となったバスを待つ老人という存在を登場させていることを考えれば、そうした消えゆくものへのノスタルジーがあるんだろうとは思います。

・真に社会からの疎外を感じながら生きるということ。そのために他人からの屈辱を受け入れ、受け流すような、本来なら必要のない術でコミュニケーションを取らなければならない全ての人たちに、『ゴーストワールド』は捧げられている。

・疎外感は決して十代だけの特別なものではないこと。そして現代を生きる人々は、他人に差別や疎外を感じさせないよう隠すのが上手くなっただけで、根本の問題は現在も隠されたままなのかもしれない、という問い。『ゴーストワールド』は、キレイに見える世界の、その裏に押し殺されてしまった人々の感情を掬いあげる。

・永遠に来ないバスを待ち続ける老人。イーニドは彼の姿を見ると安心するという。いつもそこに居てくれるから。ここではないどこかに、ある日突然いなくなってしまうことを望むイーニド。イーニドもまた、バスを待つことになる。

・シーモアから買ったブルースのアナログレコードに収録されたスキップ・ジェームズの「Devil Got a Woman」に共鳴するイーニド。「悪魔になってもいい/彼女の男になれるなら」。

23.11.28
ル・シネマ 渋谷宮下