廃墟同然のセックス・クラブを相続した若い娘が、建物内に蠢いている残留思念を感じ取っていく。いわくつきクラブにおける恐怖体験を描いている、サスペンス・スリラー。

精神疾患持ちのヒロインが、叔父から相続した元クラブの修繕を推し進めるのだが、労働者（スティーヴ・ブシェミなど）による強姦被害、警察官への不信感、建物内の怪異現象などを口火にして、バッド・トリップへと落とされてしまう。

怪異現象と探索劇にある程度の訴求力が備わっているものの、秘められた過去を断片的に開示していく手法が、かなりチグハグに感じられる。物語の進捗が伝わってこないため、ただただボケーっとした鑑賞を強いられる。

非ヌードのジェニファー・ジェイソン・リーが新境地を切り拓いていると言えなくもないが、この世界観で「ポルノ描写なし」を貫き通すのは、さすがにムリがある。エログロ在りきのドラマなのに、エログロ感覚が得られない。そんな、虚無的作品。

1988年”Heart of Midnight”。不健全を絵に描いたような映画。デ・パルマ風味もある。ホモ、レイプ、ＳＭ、異常心理、覗き、殺人。変態館の超常現象を３通りに説明できる。（１）屋根裏の犯人のしわざ。まるで江戸川乱歩。（２）エイズで死んだおじさんの霊。「ポルターガイスト」＋「ヘルハウス」。（３）主人公の幻覚。赤いフェードアウト。明らかにそうであるカットが途中から入ってくるので、わけわかんなくなったままラストまでいく。一応理屈をつけてるが、１＋２＋３の話だと思われる。カルト映画にはなり損ねた。

死んだ叔父から遺言で引き継いだゴージャスな風俗店をリニューアルしようと住みついたらさまざまな幻覚みちゃってあげくにレイプ。メンヘラ思春期の過去で刑事も信用してくれない。ジェニファー・ジェイソン・リーがとにかく輝いている。館の内装もファッションも撮影も最高。こういう作品は満点。