みかんぼうや

サラの鍵のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

サラの鍵(2010年製作の映画)
4.0
脚本良し、演出良し、映像良し。ホロコースト物の隠れた名作。どこでこの素晴らしい作品を知ったのだろう?

1942年のパリ、ユダヤ人を捕らえるため軍隊が突如アパートに押し入り、弟を守ろうととっさに彼を家の納戸に閉じ込め鍵をしたサラ。そのまま弟を除く一家は収容所に連行。凄まじい恐怖と閉塞感を感じる収容生活。納戸に閉じ込められた弟はどうなる!?

・・・という心を鷲掴みにされるオープニングから、場面は一気に2009年のパリ。とあるジャーナリスト一家がパリのとあるアパートに転居しようとする。歴史あるそのアパートに隠された真実・・・物語は、そこから1942年と2009年を何度も交錯させながら進んでいく・・・

パリで起きたユダヤ人迫害の実際の歴史をもとに作られたフィクションだが、当時の悲劇を描く社会派ドラマでありながら、1942年に生きたサラ、という人物のその後と現代に生きる人々の繋がりをミステリー調で見せるエンタメとしての巧さにより、歴史の惨さを追いかけながらも最後まで興味を惹きつけられる映画としての面白さがある。

そして、そこに宿る、「悲惨な過去は、私たちに関係のない“ただの過去”として終わらせてはいけない」という力強いメッセージ。その過去を忘れることなく“未来に踏襲していく”かのようなラストシーンには、非常に胸が詰まる思いがした。
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