ボブおじさん

キング・コングのボブおじさんのレビュー・感想・評価

キング・コング(1933年製作の映画)
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世界的に有名なランドマークであり、ニューヨークの象徴的な存在として知られているエンパイア・ステート・ビルはさまざまな映画や小説に登場するが、何と言っても最も有名なのはこの映画だろう。

何せこのビルが竣工したのは1931年。この映画公開の僅か2年前のことだ。最上階には展望台があり、そこからは息をのむようなパノラマビューが楽しめる、まさに人類の叡智の結晶・文明の象徴とも言えるこのビルを故郷の断崖と見立てたか外壁を剥がしながらよじ登り、頂上で野生の雄叫びをあげるキング・コングの姿と共にエンパイア・ステート・ビルの勇姿は全世界に知れ渡った。

今でも〝ゴジラ〟と人気を二分する怪獣界のスーパースター。本作以降、まさに今日までリメイク、関連作品、または影響下にある作品は数知れない。

個人的に思い入れがあるのは1976年のジョン・ギラーミン版の「キングコング」で、その思いは既にレビューした。出来がいいのは本作へのリスペクトに溢れた2005年のピーター・ジャクソン版だと思うが、歴史的価値という意味では特撮映画、怪獣映画の基盤を作った本作が間違いなくNo.1だろう。

当然ながらCGなどまだない時代に人形アニメによる特殊撮影で、小さなゴリラの人形を巨大で恐ろしい「キング・コング」に見せる技術は、虚構の世界に観客を連れ込むという映画の本質を見事に体現している。

更には単に怪獣という脅威と人類が戦うという構図だけではなく、文明批判のスパイスも利かせ、コングが生け贄としてささげられた美女アンに恋心を抱いている様にもみえるため、終盤ニューヨークでアンを探して彷徨う姿が切なくなる。そして最大の見せ場は、〝摩天楼〟と呼ばれたニューヨークの象徴エンパイア・ステート・ビルでのスペクタル。

この映画を現在のCG特撮映画を見慣れた視点から幼稚だとか稚拙だとか批判するのは些か気の毒だ。最新の「ゴジラ-1.0」や「ゴジラxコング 新たなる帝国」だって90年後にはそのように見えてしまうだろうからそこは仕方がない。

1933年ドラえもんの作者、藤子・F・不二雄や黒柳徹子が生まれた年に「キング・コング」はエンパイア・ステート・ビルに登っていたのだ!