滝和也

緋牡丹博徒 鉄火場列伝の滝和也のレビュー・感想・評価

緋牡丹博徒 鉄火場列伝(1969年製作の映画)
3.9
阿波踊りに咲く花は
血染めの華か、緋牡丹か

徳島を舞台に、
オールスターキャストで
贈る緋牡丹博徒シリーズ
第5弾!

「緋牡丹博徒 鉄火場列伝」

子分を引き取りに徳島の刑務所に向かうお竜(藤純子)。だが病に犯されていた子分と雨の中彷徨う事に…。その難儀を救ったのは嘗て二代目として徳島を仕切っていた江口(待田京介)だった。カタギになっていた江口は小作人の労働争議に巻き込まれていた。だが旦那衆は三代目をけしかけ、小作人たちを脅し始める…。お竜は助けてもらった恩義を返すため、気質衆に手を出す輩と対決する!

五作目まで来ました(笑) 遂に丹波哲郎登場!鶴田浩二に若山富三郎、そして待田京介と渋すぎる、ダンディな面子が揃います!ヒロイン緋牡丹のお竜の女っぷりに惚れ抜いた面々が次々と男を魅せる痛快な我慢劇に仕上がっています。

監督は第一作を監督した山下耕作監督。格調高い侠客の様式美、アクションの外連味とオーソドックスな演出ながら、やはり巧さが光ります。

中盤は博徒である緋牡丹お竜の面目躍如となる2つの賭場でのシーン。敵の真っ只中で緊張感漂う様式美の限りを尽くす演出でお竜さんの美しさ、鉄火肌の啖呵を見せる第一ラウンド、第二ラウンドでは、鶴田浩二との一騎打ち。鶴田浩二の慣れた手並みの見事さ、所作の美しさ、そしてやはり緊張感が並ではないですね。

セットの美しさ、使い方も巧みで、明らかにカキワリとわかる背景まで返って味があったりします。ラストのアクションも多対一のリアルな戦いを描くように小路を使った狭い空間のアクション。足元で乱れる着物の裾からカメラが上がりながらのスローモーションによるお竜さん対鳴門川(天津敏)の殺陣が美し過ぎる。

今作は渡世の義理が複雑に絡み合い、皆がにっちもさっちも行かなくなる状況なんですよね。そのため、中々複雑な展開を見せてくれます(^^) ただその中にあって、天津敏の悪一直線ぶりは、毎回ながらブレがありません。この方は毎回、別人役で憎たらしい、悪をやり切ってまして、笑えるレベルですよ(^^)

今作でコメディリリーフの若山富三郎演じる熊虎親分が復帰。なんと今作は殺陣もあります(^^)ラスト近く、お竜さんに協力し、兄弟分と戦います。

そして遂に来ました!丹波哲郎!あの007のタイガー田中を思わせるダンディでカッコ良すぎる役ですよ!後半出てきて美味しい所は丹波哲郎が持っていく(笑) 最初はお竜さんに落とし前を要求して、対決寸前。事の流れを理解し、鶴田浩二を助け、更には…ですから(笑)。

鶴田浩二は相変わらず巧い。今作は子供を連れた流れ者。この子供がキーにもなるんですよね。鶴田浩二は渡世の義理、ヤクザ稼業の哀しさを表していました。その方と対比される存在でカタギになった待田京介も素晴らしい。この方はレギュラーの不死身の富士松ではない役で今回登場(笑)今まで頑張ったかいがありましたよね〜(^^) これ藤純子さんの完全な相手役。良かったですよ〜(^^)

藤純子さん、今作で台詞回しを少し変え、更に上手くなりました。啖呵を切った時の語尾が違う。より挑発的でわざと発音を雑にしている気がするんです。それがまた色っぽいんですよ(^^)

任侠世界の哀しさ、柵を複雑な組・個人の関わりあいの中で見せた佳作です。緋牡丹博徒はやはり面白い。ここから更に良い作品が来るのですから、凄いシリーズですね。
滝和也

滝和也