ペコ

スワロウテイルのペコのレビュー・感想・評価

スワロウテイル(1996年製作の映画)
4.4
カルト的人気があるのも頷ける。

かく言う自分も、イェンタウンのナレーションから入り、警察署内で名前も分からない人物の葬儀が始まる一連のシークエンスの時点で、あ、これ好きなやつかも。とうっすら確信。
なんと言うか、いつかに置いて来た90年代の面影に後頭部を強打されたような目眩…あの時代の彩度低めのカオスがそのままパッキングされた缶詰を、無防備に開けてしまったかのような感覚を憶えました。

この時代の作品の退廃的なムード、ストーリーの無軌道さ、解像度が低いが故の膜が張ったような映像が連なって、混然と紡ぎ出す美しさって何なんだろう。他に同じような作品が何があっただろうかと探したくなる。(ぱっと思いつく限りだと、黒沢清の回路かカリスマ辺りとか…?でも映画というよりあの時代のMVとかに通じるニュアンスかも)
そしてこの監督で、この時代にしか作れなかったであろう、ということもまた一つの不可逆的な魅力なのかなと思います。

Charaは言わずもがな、それ程登場しないのに異様に存在感を残す江口洋介、そして伊藤歩の透明感等々…各キャストの演技や楽曲も素晴らしく、イェンタウンという日本があの時代のどこかに本当に紛れ込んでいたかも?と錯覚させる程、生々しく記憶に滑り込んでくるような一作でした。
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