まどろむ真冬の陽だまりの中、
マイウェイを繰り返し聴いた朝があった
この曲いいよね、と貴方は云う
シナトラだね、と私が云う
シナトラ？
貴方はシナトラを知らなくて、
ジャズでとても有名な人なんだよ帝王って云われるくらい
と話すと ふうん と興味深げに聞いていた
そのあと あいのうた を繰り返しかけた
私は口ずさんで 貴方は上半身裸のままふとんから抜け出して 細い指で細い煙草に火を付けると 小さなキッチンでゆっくりゆっくりと吸い終えた
そして 胸に彫られた蝶をぱたぱたと羽ばたかせるグリコの真似をしながら また私の元へ戻ってきた
その姿は はっとするほど愛らしくて そしてとても儚く思えた 煙草のけむりと一緒に消えてしまうのではないかと 思った
私はそのとき確か夢現で でも確かにとてもとても幸せだったことだけは憶えていて けれどそれが長く続かないことも魂は知っていて 心では涙を流していた
そんな美しいだけの記憶が随分と時が経った今でも焼きついてしまっていて もう一生会うことはないに違いないのに きっと一生忘れられない思い出なのです
これがわたしのスワロウテイル
あぁなんてこっぱずかしいことを書いてしまったんだろう
作品としても間違いない 最最上級の名作です
