デニロ

女の歴史のデニロのレビュー・感想・評価

女の歴史(1963年製作の映画)
4.0
ストーリー展開はかなり強引で、仲代達矢、草笛光子のシーンなど唐突で作りすぎているんじゃないかと、観ながら思ってしまった。でも、終盤に登場していたのをすっかり忘れていた星由里子のシーンで泣けてしまう。高峰秀子のそれまでと、星由里子のそれからが同期してしまう。

美男宝田明に嫁いだ高峰秀子。嫁いだ途端に嫁ぎ先が破産。長男が授かるも夫は出征。そして戦死。戦中戦後を子どものため、身を粉にして生き抜く。息子を大学までやり、ようやく就職したかと思えば、キャバレーに勤める娘と結婚するという。言い争うその果てに息子は家を出、その娘と暮らす。そしてその息子は交通事故で若くして亡くなってしまう。もはや生きるよすがもなくなってしまう。生きるとは、生活とは、じっくりと考えるべき話だった。

人生は楽じゃない、だから宗教や芸術や愛がある、と誰かが言っていた。それらは人生とは別物なんだとつくづく思う。であるからこそ至高なものとしてあり得る。本作には縋り付くような愛があり、その愛がひとをして生へと結びつける。芸術とはこうした作品を言うのだと思う。

星由里子という女優さんは、ゴジラや若大将に出てくるお姉さんとばかり思っていたけれど。川島雄三や成瀬巳喜男の作品で強い女優さんなんだと改めました。

1963年製作公開。脚本笠原良三 。監督成瀬巳喜男。

神保町シアター 没後50年 成瀬巳喜男の世界 にて
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