だいき

カクテルのだいきのレビュー・感想・評価

カクテル(1988年製作の映画)
2.6
お酒を飲んで忘れよう。

1989年ゴールデンラズベリー賞最低作品賞、最低脚本賞受賞作品。
タイトル通り、バーテンダーである登場人物の手によって様々なカクテルが登場する映画。
撮影当時20代と若いトム・クルーズの笑顔と競うように、映画に華を添えている。
劇中でも「オビ・ワン」という言葉を出してるようにこの作品はフォースが酒に変わった『スター・ウォーズ』である。
トム・クルーズの師匠にあたる男はトムに酒で稼ぐにはどうしたらいいかだけでなく、人生観や女の口説き方、そして肝であるカクテルのパフォーマンスまで徹底的に叩き込む。
その師弟関係の姿はオビ・ワンとルークを彷彿とさせる。

全体的に映画は虚構な装飾にまみれており、ファッションに金はかかってるが着飾っている人物はすっからかん。
登場人物は大抵若者を中心に配置するのだが、この物語に登場する若者は主人公と中盤から登場するジョーダンという女性くらいで他の若者はあくまで彩り程度の存在なのだ。
とにかく悪い意味でキラキラであり、イケイケである。
劇中でも「客は金を運んで来る者と思え」、「酒はたくさん注いでるように見せかけろ」、「パフォーマンスでごまかせ」と言っているが、まさにこの言葉がそのまんまこの映画に当てはまるよう。

テケテケした電子音楽とキラキラした美術でゴテゴテに塗りたくり、一見80年代らしいイケイケの作品を装いながらも中身はドロドロの血まみれ破滅映画。
学歴や経歴を持たない男が気合い一発で成り上がっていくという展開も似ているが、野望、出世、金を追い続け、突き詰めると人間は人間らしくなくなっていくのではないかという部分が本作には一切ない。
トム・クルーズが主演だからかアイドル的映画と揶揄されることもあるが、若く爽やかな役者の演技と主人公の成長と恋、鮮やかに作り上げられるカクテルを一気に味わえる映画であることは間違いない。
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