みかんぼうや

チャンプのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

チャンプ(1979年製作の映画)
3.7
【TJ!TJ!TJ!映画史上ナンバーワンの子役!?これはチャンプを主役としたボクシング映画ではなく、TJと父の厚い絆の物語だ。】

洋画のボクシング物、というだけで誰もが「ロッキー」の存在を意識せずにはいられないほど、この分野において圧倒的な存在感を放つ「ロッキー」。今年に入り人生で初めて「ロッキー」を観たことで、先日の“サスペンスの「セブン」”同様、全ての洋画ボクシング映画を観る際に無意識のうちに「ロッキー」と比較せざるを得ない、という覚悟をしていました。

・・・と思って本作を観ていたら、途中で気づきました。本作、「ロッキー」のようなボクシングそのものを題材にした作品ではないのですね。確かにラストの展開でボクシングは絡んでくるけど、基本的には父子の絆の物語で、印象としては「ロッキー」よりも「クレイマー・クレイマー」に近い感覚でした。

普段滅多に泣かない明石家さんまが「何度見ても泣ける」というエピソードがついてまわるほど、とにかく本作は泣ける映画として有名なようですが、実は私、全く泣けませんでした。おそらく、その “王道すぎるベタベタな展開”と“泣かせ演出”がこちらの予想を遥かに超えてきて、ちょっと受け止めきれなかったから。いや、もしかしたら私、格闘技(ボクシング含む)が物凄く好きなので、最後のあの結末は、あまりにも“やりすぎ”に見えてしまったのかもしれません。

ただ、あくまでも“泣けなかっただけ“で、映画としては凄く面白かったし好きです。全編通して思いっきり漂っている古き良きアメリカ映画的な雰囲気も好きだし、展開はベッタベタだけど分かりやすくて没頭しやすいというのもあります。ただ、それだけだったらここまで面白いとは思わなかったでしょう。

今作の最大の魅力は、他の方のレビューでも書かれていますが、やはりTJ(チャンプの息子)の存在。これにつきると思います。長らく私の中で映画史上最も好きな子役ナンバーワンだった「アイ・アム・サム」のルーシー(ダコタ・ファニング)を塗り替えて、堂々の1位に躍り出るほど、本作のTJは本当に魅力的!いつも目をウルウルさせながら、何があっても常に自分の本当の父を“チャンプ”として憧れと誇りの眼差しで見続けるTJ。本来違和感しかないはずの、自分の父を「チャンプ!」と呼び続けるこのTJの純粋な気持ちが本当に愛らしくてたまりません。チャンプが幸せそうな時に、TJが最高に嬉しそうな表情を見せるたび、その虜になりました。そして、観終わった後に冷静になり、「これって演技だったんだよね?演技でこんな表情できる?」と思わずにはいられませんでした。

ということで、私にとって本作は、我が子の思いを背負ったチャンプが主役のボクシング映画ではなく、TJが主役の父への愛と熱い想いを描いた作品だったのでした。
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