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霧の中の風景のペインのレビュー・感想・評価

霧の中の風景(1988年製作の映画)
4.7
途方もなくどこまでもピュアで繊細。
気取った芸術映画とは対極。

本作を観た後に昨日、続けて黒沢清監督の『スパイの妻』を観たことで黒沢清とアンゲロプロスの親和性に改めて気づかされた。

霧がかかった船のショットや横移動、かなりアンゲロプロスを意識しているのが見てとれた。

名作『旅芸人の記録』同様、本作でも超絶技巧を凝らした惚れ惚れする引きのロングショットが見られます。ただ『旅芸人の記録』よりも主人公が可愛らしい小さな少年少女である点や、シンプルなストーリーライン等、本作のほうが見易い。

姉の方がトラック野郎(運転手)にレイプされるシーンの限りなく省略された見せ方や、主人公姉弟とバイク乗りの兄ちゃんオレステスの別れのシーンの超絶長回しには息を呑んだ。


※以下、ネタバレ


「父」を「神」に置き換えると話が腑に落ちる。バイク乗りの兄ちゃんは「天使」。そして神に会うことは死を意味する。つまり国境を越えたとき、姉弟は射殺された。死後、神に会ったのである。
本作はおとなのオトギ話。
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