まぴお

霧の中の風景のまぴおのレビュー・感想・評価

霧の中の風景(1988年製作の映画)
3.9
【かみさまっているのかしら】

まるで寓話の世界に迷い込んでしまったかのような
ファンタジックとリアリティの狭間を12歳のヴェーラと5歳のアレクサンドロスが渡り歩く。

テオ・アンゲロプロス。
この監督は実にイデオロギーであるギミックの使い方が秀逸。
時計の針はこの世界では止まっているのだろうか?
静止する大人。工場の巨大な煙突。巨大な掘削機。巨大な石像。

フォルムから図の配置まで計算されたその構図は息を飲む。
黒と白そしてグレイの中間色が黄金比的に美しい。まるで美術館の絵画を渡り歩いてるよう。

エミール・クストリッツァ監督のアンダーグラウンドを動という混沌の中の切なさを表現しているとしたら
テオ・アンゲロプロス監督のこれは静という混沌の中の切なさ。

しかし先の見えない旅は非常に虚しい。
行き着くことのない二人の旅は序盤からひりひりと染み渡る。それは現代に目的なく生きる人たちにも通じる。

アテネからドイツへ...
幼い姉弟がまだ見たことのない父親を探しに行くロードムービー。
霧の中の風景に彼らは何を見るのか?

ひとつ言っておくとこの監督はドSです。
静かな霧の中でいきなり背中を押して崖から突き落としてくるような監督です。
この監督の作品を観るときはある程度の覚悟を持っておいた方が良いかもしれないです。
フェリーニやタルコフスキーが好きな人はオススメ。
最近だとパンズ・ラビリンスにハマった人なんかにもわりといいかも。
あとひたすらアレクサンドロスが可愛い。やばい。

476本目
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