TaT

霧の中の風景のTaTのレビュー・感想・評価

霧の中の風景(1988年製作の映画)
4.8
希望を簡単に踏み潰した後に与える絶望とか酷いよ大人たち。それでも、曖昧な霧の中の希望や光を見失わず歩き続けた姉弟の姿に心打たれます。 

雪の中時間が止まったように立ち止まる人々を描いたシーンは鳥肌物。ただ見惚れてました。立ち止まる人々を横目に姉弟だけが歩いていけたのは子供には潜在的な美が備わってるからなのでしょう。でも、その後死んだ馬の隣で感じる隔絶感がその分痛切に。世の中の無情さが心苦しい。 

この映画唯一の救いとも言える劇団員の青年との出会いは微笑ましいシーンもあるのですが、結局彼も現実に連れ去られることに(このシーンの演出はカルト的で興味深い!)。そして、姉のヴーラが感じた恥と失望と拒絶がやるせな過ぎ...。 

久し振りに泣いた!子供の純粋さと世の中の無情さに感化されやすい自分にとって、その対比の上手さと、美しく時に詩的な表現に魅せられ続けました。朧気で幻想的なラストもたまりません。とても印象に残る1本でした。
TaT

TaT