Mikiyoshi1986

霧の中の風景のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

霧の中の風景(1988年製作の映画)
4.0
ギリシャ映画界を牽引した故テオ・アンゲロプロス監督が送るジュブナイル・ロードムービー。

幼い姉弟が寒々しいアテネの都市から抜け出し、父がいると信じて止まないドイツを目指して過酷な旅に出ます。

様々な大人たちに翻弄され、助けられ、痛めつけられ、漂流する様は、長らく内外のイデオロギーに翻弄され今もさまよい続けるギリシャそのものを表し、
「旅芸人の記録」にてその全貌を見てきた劇団御一行の登場はその中核を担っていると云えます。

光の射さない曇天の中、二人はギリシャの暗部を幼き眼差しと肌で感じとり、徐々に適応という名の成長をそれぞれが育んでいきます。

時間を無効化したかのような降雪シーン、長回しのカメラワークによって演技の臨場感を増幅させる技巧などアンゲロプロスらしい演出はいつまでも心に残る。

霧の中の風景に見えたものは現実か幻か、それとも永遠の安息を得られた二人の心象風景なのでしょうか。
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