Gaku

レインメーカーのGakuのレビュー・感想・評価

レインメーカー(1997年製作の映画)
4.0
 自身の劣悪な養育環境から「正義」を追求することを目指し、親の援助もなくバーで働きながらも大学の法学部を卒業して、弁護士志望の若者ルディ・ベイラー(マット・デイモン)。ただ大学は卒業しはしたものの、コネもない彼はバーの店主の紹介で悪徳と名高いブルーザー・ストーン(ミッキー・ローク)の事務所に見習いとして働き始めるほかなかった。そこで彼は弁護士業界の「現実」をまざまざと目にすることになる。病院に押しかけて交通事故に遭った患者たちへの訴訟の押し売り。そこでルディは財産にたかる親族を遠ざけるために遺言書を作成しようとする高齢者バーディ夫人(テレサ・ライト)や、苛烈なDVを振るわれているにもかかわらず離婚できない女性ケリー(クレア・デインズ)らと弁護士としてではなく、相談のできる友人として関わり始める。そして司法試験に通った彼が最初に携わった案件は白血病への治療に対して保険金の支払いをかたくなに拒否する保険会社への訴えだった。白血病で死にかけている若者ダニー(ジョニー・ホイットワース)とその両親たちは、保険費を払っているにもかかわらず、理不尽な理由で支払いを拒否し、かつ高名な弁護士ドラモンド(ジョン・ヴォイドら)を雇い、新人のルディをなめ切って、安い示談金で処理しようとする。高齢の判事も余計な手間をかけずに、ドラモンドと一緒にルディを囲い込もうとする。またDV被害女性のケリーも殺される危険があると知りつつ、夫との縁が切れず、退院後すぐに家庭に戻ってしまう。かつボスのブルーザーは脱税容疑でFBIから指名手配がかかり逃亡。打つ手がない。
 だが、その当の判事が心臓発作で急死をとげ、公民権運動からのたたき上げの黒人判事と担当が変わったことから、事態が変わる。訴訟調査のたたき上げの事務員のデック(ダニー・デヴィート)を相棒に、ルディはダニーや身近な人々のために、自らの武器、法律を手に闘い始める。
 という(ネタバレなしでは)お話し。1997年の公開で、すでに四半世紀も前の映画ですが、司法の(不)平等性や新自由主義経済下での貧困層の問題など、現在に通じるものも多いです。またNetflixのドラマ『ベター・コール・ソウル』(1~6シーズン)はこの映画の影響が非常に強いことが分かったり(実際にドラマ内で言及されていたりします)。まだ拙いマット・デイモンの演技や、いまからみると少し淡白で、ひねりのないF. コッポラの演出など、評価は凄く高くはつけられないのですが、アメリカ社会の現在性を早くに切り取り、さまざまなオマージュ作品を生んだ偉大な古典といってよいのではないでしょうか。アメリカ映画好きの方には必見の佳作映画です(言うまでもないことかもしれませんが)。
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