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ハンバーガー・ヒルのあのレビュー・感想・評価

ハンバーガー・ヒル(1987年製作の映画)
5.0
羅生門オマージュの太陽かと思ったら、夜空を落ちてくる照明弾だと分かった時、物凄い絶望感がありました。否応なく兵士の目で戦場を追体験することとなる、凄まじい映画でした。

冒頭、臓器剥き出しの兵士の脇に空爆が起こるとベトナムの子供が浮かび上がってくる酷いディゾルブから既に只事ではないと思いましたが、アニマルズの”we gotta get out of this place”の鬱屈として妖しいイントロと共にヘリが遠景の山に吸い込まれて行って、野生的なシャウトが兵士たちを死を前にした脱力感と全てから見放されて投げやりな気持ちと共にハンバーガーヒルに叩きつける本編への導入が正に完璧でした。

味方に誤射された兵士のヘルメットが激しい木漏れ日がさす斜面を転がっていく儚さも見事でしたが、なんといっても最初は区別もつかなかった匿名性を持った空挺団が、だんだんと観客の我々の中で個性を持ち始める頃に次々と撃ち落とされていく虚しさがたまりませんでした。最後、丘の頂上で爆炎に囲まれながら無言で終わる虚無感も見事でした。

また、望遠を多用したシビアなショットの中に、爆炎を上手く捉えていたり、人の流れ重機の流れ航空機の流れ、そして山肌の構図をかなり考えて画面構成がなされていた印象で、そういう意味では単にグロテスクな映画というよりは、繊細なタッチの映画といえるのではないでしょうか。

あとあのハンはどこから連れてきたのか不明ですが、大好きです。ロケラン持ち上げて水溜りが出てきたところにヘリが飛んでくるシーンは物凄くシュールでした。
あ