のりしろ

ハンバーガー・ヒルののりしろのネタバレレビュー・内容・結末

ハンバーガー・ヒル(1987年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

南ベトナム937高地。
そこは、簡単に挽き肉にされてしまう事から「ハンバーガー・ヒル」と呼ばれていた。
丘の攻略を目指して進撃する米軍部隊の凄惨な状況をリアルに描いたベトナム戦争映画。


兵士達は「命がけでベトナムを救う価値があるのか?」という疑問を持ちながら、それでも生き残るために戦い続ける。
しかし長引く戦争で本国アメリカでは反戦ムード。
負傷して帰っても歓迎されず、戦地に手紙を書くことすら「戦争に賛成している事になるから」と送ってもらえない。
現地ベトナム人からは早く出て行けと嫌われ、本国でも反戦のやり玉にあげられ、毎日死にゆく戦友達を看取りながら、銃弾の雨の中を「丘を奪取する」という目的ただそれだけのために泥だらけになりながら登っていく。
だがその「丘を奪取する」という目的ですら、軍の上層部から機械的に下された指令であり、「何のために」という理由はわからない。

誰からも歓迎されず、何のために命をかけるのか分からない状況で、鳴り止まない銃声と爆発音の中をひたすら進み続ける…こんな状態でまともな人間の精神を保っていられるわけがない。


■密林での戦い
ベトナム戦争が長引いた理由として、深いジャングルと疫病が理由の一つとされていますが、この映画を見ると、兵士達がどれほど劣悪な環境で戦っていたのかもよくわかります。
行っても行っても深い森、敵味方の判別なんてつかないでしょう。
病気を防ぐために新兵には歯の磨き方から靴下の所持確認まで教える様子が描かれています。

■味方を掃射するヘリ
敵味方の区別がつかず、誤って味方のアメリカ兵を撃ってしまうヘリ。
撃った側も、撃たれた側も、それを見ていた者も、誰も誰かを責めることなんてできない。
こんな状況では何が起きても受け入れるしかないのかと、虚しさが残りました。

■「もう手紙は書かない」
過酷な環境の中にいる兵士達の心の拠り所って、やっぱり国に残してきた家族や恋人だったと思うんです。
そんな人達から見捨てられてしまったら…

■丘を取る
兵士「この丘を占領する目的は?」
軍曹「駐車場にするのさ」
理由も分からないものに命をかけないといけない。理由を考えてはいけない。兵士はただの駒であれということなのか。

■いつか戦争反対と声を高らかに言えるようになった時に…
多分ヒトがヒトである限り、戦争がなくなる日は永遠に来ないと思います。
それでも、戦争の悲惨さを風化させてはいけないし若い世代はきちんと学んで、知らなくてはならないと、再認識させられた作品でした。
ベトナム戦争を知りたければこの作品をお勧めします。
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