よしまる

オールウェイズのよしまるのレビュー・感想・評価

オールウェイズ(1989年製作の映画)
3.6
 映画「オードリーヘプバーン」公開記念のレビュー、10回で終わりにしようと思ってたけれど最後にこちらをン10年ぶりに再鑑賞したのでもう1本お付き合いください。リアルタイムでオードリーヘプバーンの新作映画を観ることが出来たのは結局これ1本のみだったことに思いを馳せながら書いてみます。

 当時はまさか遺作になるとも思わず、何だか取ってつけたような役どころだけれど、まあお綺麗だしいいか、みたいな感想だった気がする。いまの若い方たちがオードリーの過去作を観てもそんなに深い感銘は受けないと思うし、ボク自身も当時はそうだった。

 スピルバーグの熱意に打たれて出たのかと思いきや、E.T.に感動していたオードリーが即答で出演したとのこと。

 公開当時はまったく知らなかったのだけれど、実はこの作品、1943年の「ジョーという名の男」のリメイク。フィルマのマーク数が現在4という全くマイナーながら、脚本は「ローマの休日」のダルトントランポ。スピルバーグは当然知っていたはずで、企画時からオードリーと決まっていたわけではないことからすると、遺作がトランポになるのは運命が引き合わせたとしか思えない。

 それにしても「ウエストサイドストーリー」を観た現在となっては、彼が強烈なノスタルジーを持って監督したことは想像に難くない。そのせいか、ホリーハンターがドレスを翻してターンするシーンはどうしてもナタリーウッドが被ってしまう。

 山火事を飛行機で消火する消防士が主役のファンタジー恋愛映画で、スピルバーグ3作目となるリチャードドレイファスが主演。ちょっと年齢高めだけれど、さすがに演技は素晴らしく、愛嬌ある笑顔は健在だ。
 相手役のホリーハンターはいかにも80年代らしいキュートな女性で、このあと「ピアノレッスン」でオスカー女優となるんだけれど未見なのでぜひ観なくちゃと思った。

 予告にもあるしネタバレというほどでもないから書いてしまうと、命を落とした消防士の前に現れる天使がオードリー。オリジナルでは男性で、元々ショーンコネリーが候補だったところを改変している。
 しかしながらこれが作品の空気を決定づけているのはさすがとしか言いようがない。長きに渡り「愛」を求め与え続けてきた彼女だからこそのひと言ひと言が、主題曲の「煙が目にしみる」のごとくにしみる。1日3箱を吸い続けたヘビースモーカーだけのことはある(違うw)。

 物語は、オードリー天使の助言のもと、現世で遺された者たちを導く役割を果たすべくドレイファスが奮闘するのだけれど、これがなんとも中途半端。
 誰をどこに導き、自分はどこに着地するのかが、あっちこっちへブレてしまいのめり込めない。
 ひとつひとつのシーンは楽しいし美しいし迫力もあるし、どれもが見惚れるほどなのは監督の力量にほかならない。けれども見応えはあるのに肝心の脚本がしっかりしていないので面白みに欠けるという「スピルバーグあるある」に陥ってしまっていた。

 オードリーの遺作として、よくぞ出演してくれたという喜び、またノスタルジーをかき立てるピュアなラブストーリーとしても、これで充分と思える反面、どうしてこうなった?もったいない!という無念さが拭えない。

 やはりスピルバーグには宇宙人や歴史上の偉人たちばかりでなく、普通の恋人たちの普通のロマンスを一度でいいから本気で描いてほしい!でも、これはこれで今となっては「ありがとう」の言葉しかないよね。


 と、11本のオードリー映画をレビューしてきました。あと過去鑑賞しているのは「マイフェアレディ」「ロビンとマリアン」で、今回再鑑賞するには力尽きたので、まだ観ていないいくつもの作品とともにいづれまた。
 この間、たくさんのいいねやコメントをいただきありがとうございました。
 では、近いうちに「オードリーヘプバーン」のレビューでお会いしましょう♪