Yoshishun

オールウェイズのYoshishunのレビュー・感想・評価

オールウェイズ(1989年製作の映画)
3.7
80年代最後のスピルバーグ映画にして、オードリー・ヘプバーンの遺作。不慮の墜落事故により帰らぬ人となった消火隊のピートは、幽霊の姿のまま遺された愛人と友人たちを見守る内に、自身がこの世に遺された意味を知る。リチャード・ドレイファス、ジョン・グッドマン、ホリー・ハンターという豪華キャストで贈るファンタジックロマンス。

数多くあるスピルバーグ映画の中でも地味かつ知名度の低さを感じられる本作だが、後年の似たテーマである『ゴースト ニューヨークの幻』という名作の影に隠れているのは確か。幽霊となりこの世を彷徨うピートをただひたすら追うワンパターンなカメラワークや、鈍重なテンポで中弛みに感じる脚本が足を引っ張り、特に終盤の消火作業は完全にピートの成仏のための強引な展開に感じてしまう。

それでも、愛する人の近くにいながらも決して声の届かないもどかしさ、自分だけを愛して欲しいという苦悩を演技力で魅せるリチャード・ドレイファスをはじめ、キャスト陣にかなり支えられている部分はある。映画業界から完全に足を洗いつつも本作のためにカムバックしたオードリー・ヘプバーンも、ピートを導く天使という難役ながらもその品性や神々しさは失われていない。辺は焼け野原なのに彼女のいるところは草花生い茂るファンタジー演出は端から観れば小っ恥ずかしいが、それも彼女の存在でフォローできているので問題はない。

この後、『ジュラシック・パーク』『シンドラーのリスト』、そして『プライベート・ライアン』と第2次黄金期へと突入するスピルバーグだが、暗黒期と謳われた時代の本作も、多少の粗さは感じられつつも、十分に及第点といえる作品だった。
Yoshishun

Yoshishun