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007/カジノ・ロワイヤルのFRANCISのレビュー・感想・評価

007/カジノ・ロワイヤル(2006年製作の映画)
4.5
 00昇格後ジェームズ・ボンドの初任務。テロリストの資金源を追い、一対一のポーカーで、手に汗握る心理戦。初めて愛した女ヴェスパー、CIAの友ライターとの出会い。原作の権利を保有していたソニーとの共同製作で前作までの設定を刷新、ダニエル・クレイグが、若く荒削りなボンドを演じたリブート第一弾。

CG全盛の90年代以後のスパイ・アクションから、『ボーン・アイデンティティー』『トリプルX』など00年代のリアルでシリアスな志向のアクションを意識した作風に。

『ロシアより愛をこめて』のロバート・ショウを彷彿とさせる風貌から、悪役のイメージが強く、当初からボンド役へと推薦していた製作者バーバラ・ブロッコリの意向とは裏腹に、MGM上層部はル・シッフルの配役を考えていた。

監督は『ゴールデンアイ』以来11年ぶり、3度のオファーを断っての再登板を決めたマーティン・キャンベル。

『ミュンヘン』のモサド暗殺者に引き継ぎ、現実に基づくスパイ像の役作りのため、モサドの工作員による演技指導を元に、リアルなボンドを作り上げた。

スパイとしての所作と共に、銃火器の扱いや所作を学び、肉体改造を行い、スタントにも積極的に挑むことでファンの不安を拭い去った。

パルクールや空港でのアクションもCGをほとんど使用せず、(当然スタントマンもいるが)80年代以前の007を意識した、生身のアクションを見せる。

繊細で人間味溢れる寡黙なスパイはフレミングの原作やティモシー・ダルトンの2作品を意識させながら全く新しいボンド像を作り出した。

音楽にはピアース・ブロスナン時代の三作に引き継ぎ、デヴィッド・アーノルドが続投。シンセサイダーを多用したテクノ調から一転、ドラムなどの自然音に基づくサウンドが印象深い。

主題歌のクリス・コーネルは80年代ロック風にデヴィッド・アーノルドと共同製作で男らしさに溢れたダニエルの新たなボンド像に合わせた曲調に。モノクロームの映像から切り替わり、女性のシルエットが全く登場しないオープニング、「You Know My Name」のフレーズが高らかに連呼される時、本家と亜流の違いを嫌が応にも意識せざるを得なくなる。

監督は『ゴールデンアイ』以来11年ぶり、3度のオファーを断っての再登板を決めたマーティン・キャンベル。シリアスな作品を持ち味とする職人監督の安定感を感じさせる演出にクレイグの硬派な印象がマッチ。

ベルドリッチの『ドリーマーズ』で鮮烈なデビューを果たしたエヴァ・グリーンがヴェスパーには抜擢。原作とは異なる細身で美形の悪役マッツ•ミケルセンと共に本作を機に一躍ブレイクを果たす。
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