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頭上の敵機のYohのレビュー・感想・評価

頭上の敵機(1949年製作の映画)
4.1
1949年公開戦争映画。主演グレゴリー・ペック。監督ヘンリー・キング。共演したディーン・ジャガーがアカデミー助演男優賞を受賞している。

1949年公開…ですから、第二次世界大戦終結から5年後です。これをわずか5年でと見なすか、すでに5年も経ってると見なすかは人それぞれですが、本作は第二次世界大戦の生々しい記憶がまだ残っている作品かと思います。それは直接的な表現こそありませんが、台詞の端々から感じ取れます。序盤のB-17着陸後の場面、搭乗員が降りてくるシーン。ここで生々しい血や傷跡のスプラッタな描写はありません。時代的なものも理由でしょう、しかしここで台詞が効果的に生きてきます。台詞のみですがそこに観客の想像の余地がある、果たして機内はどうなっているのかと。あの包みの中は一体どうなっているのかと。そして恐怖に打ちのめされる様(PTSDでしょう)を演じる俳優たちを見て、戦争の酷さをゴクリと生唾を飲み込む。

しかし本作の真の魅力は、グレゴリー・ペック演じる准将でしょう。中間管理者の悲哀、と言えば簡単か。しかしそれだけではあまりにも簡単すぎる。命令しても思う通りにならない歯がゆさ、そして自分のせいで部下が死ぬという責任。それは仕事(とそれに責任と誇り)を持つ人々に共通するものではないでしょうか。本作を見て思い出すのが、サン・テグジュペリ(「星の王子様」の作者です!)が書いた小説「夜間飛行」のリヴィエールの台詞です。「…部下の者を愛したまえ。ただそれと彼らに知らせずに愛したまえ」。
部下を導く重責、そして如何に組織を動かしていくか、部下とどうコミュニケーションをとるか、どこまで冷徹になるべきか…これは現代にも通じる普遍性だと思うのです。だからこそ本作は魅力的です。是非、ある程度責を感じる職の人に見ていただきたい。尚、本作にはスコッチ「VAT69」がチラリと出てきます、このスコッチを飲んでみながら鑑賞はどうでしょう?
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