りょう

アメリのりょうのレビュー・感想・評価

アメリ(2001年製作の映画)
4.8
 ジャン=ピエール・ジュネ監督は、1997年の「エイリアン4」が不評でしたが、個人的には好きでした。水中で炸裂するエイリアンの映像を観たときは、「センスいい」と思いました。当時はハリウッドでうまくいかずにフランスに“出戻ってきた”と皮肉られていましたが、その直後にアッと驚く傑作ができてしまった…というのがこの作品です。
 空想といたずらを愛する少女がそのまま大人になり、社会のしがらみとは無縁の日常を過ごす物語です。一応はアメリとニノの恋愛の行方という本筋の物語がありますが、個々の断片的なエピソードの数々が完璧に面白いです。ちょっといたずらが過ぎるところもありますが、彼女の愛嬌で許せてしまいます。
 その表現は“映像の魔術師”かと思うほど緻密で芸術的です。色彩はオレンジ、グリーン、イエローがメインで、「ふたりのベロニカ」を連想しますが、その雰囲気や効果がまるで違います。ジャン=ピエール・ジュネ監督の“これがやりたかった”感とオドレイ・トトゥの魅力の化学反応で、「映画ってこんなタイプの威力もあるんだ」と気付かされた奇跡のような作品です。
 男性ながら、アメリみたいな自由な人生を過ごしたいと思いましたが、残念ながらすでに社会人になっていたし、2001年の当時は父親になったばかりでした。それは叶いませんでしたが、空想は子どものころからのクセが残っています。アメリのことを“まわりくどくて面倒くさい”という感想が少なくありませんが、いろいろ空想してシミュレーションした結果だと思います。そこがまた可愛かったりするので、女性にこんなことされたら惚れちゃいますけど…。
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