mitakosama

阪妻 阪東妻三郎の生涯のmitakosamaのレビュー・感想・評価

阪妻 阪東妻三郎の生涯(1980年製作の映画)
3.3
日本映画創世記のスタァ阪妻を追ったドキュメンタリー。映画制作時には既に鬼籍にあったので、息子の田村高廣らのインタビューと、生前の映像、ナレーションによって構成される。

歌舞伎界に入った田村青年だったが、家柄による制度により出世の見込みが無いと判り、浅草に一座を設ける。その後マキノ省三に招かれ映画の世界へ。脚本家の寿々喜多と意気投合しスター役者として躍進。児雷也や月形半平太を経て雄呂血を制作。大人数相手のチャンバラで人気を博す。

当時の大立ち回りの猛々しさと伴い、基本は多勢に無勢で負けることも多い。いわば負けの美学で愁いを帯びているんだよね。梯子で囲まれ捕縛されて打ちひしがれる姿。ソコがまた格好良い。
映画界はトーキーに。阪妻プロの設立、海外との提携の失敗、戦争などを挟み次の世代へ。アラカン・長谷川一夫・歌右衛門・知恵蔵らの対等など。
そこで日活マキノ版の忠臣蔵の紹介。東下りのシーンにかなりの時間を取って流してる。
知恵蔵の立花左近と、阪妻の大石内蔵助が対峙する場面だ。このシーンをこれだけジックリ見せると言うことは、このシーンが阪妻の歴史上で如何に象徴的かを主張したいのだろう。
確かに重厚感ある演技で素晴らしい。

そして現代劇となり新たな境地へ。
ここで稲垣浩のインタビューを交え、無法松の一生と王将を紹介。これまた実に素晴らしい。
明らかに時代劇のスター時代とは一線を画す演技力に、役者としての円熟味を感じる。
阪妻版の無法松はまだ未見なんだよなー、見たくなるぅ!
mitakosama

mitakosama