高橋早苗

パチャママの贈りものの高橋早苗のレビュー・感想・評価

パチャママの贈りもの(2009年製作の映画)
3.6
南米ボリビア アンデス高地
ウユニ塩湖

真っ白な大地に鉈を降り下ろし
黙々と塩を切り取る親子

夕日が地平線にかかる頃
「また明日」と家路に着く

村では 祖母がキヌアの種を撒く
母は 夜なべをしポンチョを織る

友達と遊ぶ子ども
サンダルが切れると 手近な物で結び直して駆け出す
好きな乗り物を口々に挙げる
線路に耳を当てて
この先に未来に 思いを馳せる

決して裕福とは言えないけれど
心豊かな日々を送るコンドリ



青い!が最初の印象

白い大地と相まって
見たことないほど青い空
「南極料理人」を思い出した


お父さんの、目出し帽にサングラスみたいな格好が怪しげに見えて
初めは何してるかわからず(笑)
雪じゃなく塩だ、湖だとわかって納得。

しかし「今日は終わり」と言って帰る
その歩いてく先に
地平線しか見えないんですけど
・・・どこまで帰るの?!
時の流れが全く違うわ。



静かな日々にも 変化は訪れる

引っ越していく 友達との別れ
祖母は亡くなり
父は コンドリを初めての塩キャラバンへ連れ出す
リャマの背に 切り取った塩を積み運ぶ
3ヶ月の長い旅


旅は
鉱山へ出稼ぎに行ったまま便りがないという
父を探す友だちも同行する

やっと探し当てた時には 悲しい知らせ
道を分かち
キャラバンは 父と息子の二人で続く



…リャマ可愛い。
目印つけて さらに可愛い。


・・・出発前 父は
「キャラバンは時代遅れだ」
と観光ホテルの建設現場に誘われる

一方で ウユニの塩を待っている人々がいる
旅は
塩と土地の作物の 物々交換だ
金にはならない

父は再会した友人に
「いつまでできるか」とこぼす

コンドリは
初めての土地で祭りの賑やかさに触れ 初恋を知る



「なるようになるさ」は世界共通?
仕事を探してより開けた土地へ
というのも何処も一緒ね


誰にでも
目の前の事実があり
選択の自由がある

塩キャラバンがなくなり
お金で塩を買うのが 当たり前になっても
誰にも文句は言えないだろう

だけどね・・・
だけどね、って言いたくなる。



パチャママとは
インカ帝国の末裔、アンデス先住民の言葉で
“母なる大地”

コンドリ初め 子ども達の笑顔は
何も知らない無邪気な子どものそれというより
すべてを知っているようで
私たちよりずっと 大人に見えたから。

大人、というのは変かな
これから辛いことや悲しいことが訪れても

大切な人と共に
乗り越えていける強さのような

その土地と
しっかりつながっている安心感みたいな
そんな満たされた笑顔。


出来れば残っていてほしい。
あの白と
青と
リャマと
笑顔と。


そう思うのは
ただの傲慢なのかな。
高橋早苗

高橋早苗