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朽ちた手押し車のmitakosamaのレビュー・感想・評価

朽ちた手押し車(1984年製作の映画)
3.7
スカパーにて。三国連太郎の渾身の作品だったのだろうが、あろうことか未公開で永らくお蔵入りされてたんだと。三国も不本意だったろうに。

新潟の漁村に住む一家。ボケ老人(三国)に、旦那が田村高廣で妻が長山藍子。娘が1人に、婆さんも含め5人家族。

介護が如何に家庭を崩壊させるかが見て取れる。
徘徊し、食べても食べても満足せず食べ続け、すぐ癇癪を起こし暴れる。
娘は嫌気がさしてるし、お母さんも疲れ果ててる。旦那は実の息子だから良いけど奥さんは堪ったもんじゃないな。

その上、婆さんが輪をかけて困ったちゃん。ボケた爺さんを甘やかし、若い女に嫉妬までする。コリャ堪らんわ。

この映画を見て、森繁の“恍惚の人”との比較をする人は多いだろう。
同じくボケ老人の大変さを描いた物語だが、“恍惚”が日に日にボケが強まる悲劇に対し、今作はずうっと同じペースでボケ続けてる。それが真綿で首を絞める様な苦しみを家族に与えてるのが判るから怖い。

婆さんも不治の病で闘病。旦那は安楽死を望むが当然受け入れられない。
ここでも介護の在り方が問われる。辛いのう。

三国の力の入った芝居も凄い。舞台が親不知海岸というチョイスもまた絶妙だ。
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