ひろ

愛のむきだしのひろのレビュー・感想・評価

愛のむきだし(2008年製作の映画)
5.0
園子温監督・脚本によって製作された2009年の日本映画

第59回ベルリン国際映画祭で、“カリガリ賞”“国際批評家連盟賞”を受賞した

何から語ったらいいんだ。初めてレオス・カラックスやジム・ジャームッシュの映画を観た時のような衝撃。邦画もたくさん観てきたけど、邦画でここまで衝撃を受けた作品なんてなかった。世界で絶賛された園子温監督の才能は唯一無二のものだ。

実験的で奇抜な映像と過激でセンセーショナルな脚本。237分という現代映画では考えられない長尺なのも話題になった。映画館では途中休憩を挟んで上映されたらしい。こんなに長いのにあっという間だった。ここまで引き込まれる映画はなかなかない。

ユウとヨーコとコイケの物語を別々に語り、やがて1つの物語となっていく。両親からの愛を全く受けずに育った3人が出会い、物語は紡がれていく。それぞれが間違った方向に歪んでしまっているのが痛々しい。しかし、そのむきだしの愛に心を打たれる。これこそが真の純愛映画だ。

ユウの父テツを誘惑するカオリは、脇役ながら“愛のむきだし”がぴったり当てはまるキャラクター。かなりウザくてイライラするけど、あれはあれですごいなって思えた。ユウの仲間たちが好きだな。一般的には悪かもしれないけど、ユウ目線ではすごいいい奴らで好感持てた。

性や宗教、犯罪を扱った過激で変態的なきわどい内容だが、それこそがリアルな人間社会であり、生々しい悪と愛を描いている監督の目線は素晴らしい。さらに、この作品、実話が基になっているっていうから驚きだ。これと似たようなことが現実にあったことがすごい。

ユウを演じたのは映画初出演にして初主演となった音楽グループAAAの西島隆弘。AAAの彼には微塵も興味がないが、俳優としては見込みがある。初主演が俳優に厳しい園子温監督だったのは幸運だったね。変態だが愛は一途という複雑な役をしっかり演じていたと思う。

ヨーコを演じた満島ひかり。「Folder5 」だった女の子が魅力的な役者になったね。男を嫌悪していた所から、精神的変化が激しい役だったから見応えある演技だった。

コイケを演じた安藤サクラ。コイケは怖かった。こんなやな女はなかなかいないってぐらい凶悪なキャラだったね。まあ同情しちゃう面もあるんだけどね。

映画観てて、ゆらゆら帝国の曲が合いそうって思ってたら、本当にゆらゆら帝国の曲が挿入歌で流れたからびっくりした。ゆらゆら帝国の名曲「空洞です」なんか最高だね。本当に映画の世界観にぴったりの曲だった。

ベテラン俳優が脇をかため、若手俳優が熱演していて、音楽もいい。こういうのすべてひっくるめて監督の力が大きかった作品だと思う。園子温監督は全てを掌握してコントロールできるタイプの監督だね。こういう芯のある監督は好きなんだね。ここまで完成された邦画は記憶にないから、観てもらいたい。
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