コーカサス

折れた矢のコーカサスのレビュー・感想・評価

折れた矢(1950年製作の映画)
3.6
“愚か者は今日しか見ないが、あなたは明日を見る”

『決断の3時10分』や『縛り首の木』の名匠デルマー・デイビス監督による先住民と白人の共存を描いた傑作西部劇だ。

退役軍人のトム(スチュワート)が怪我をしたアパッチ族の少年を助けたことで、族長コチーズ(チャンドラー)の信頼を得て、互いの架け橋となるべく尽力する。

特筆すべきは、これまで悪人として描かれたインディアンを単なる敵役としてではなく、時には白人と平等に、また時には彼らの視点から切々と描いた画期的な作品であるということだろう。

どこまでも誠実で苦悩しながら先住民と平和を築くことに尽力するトムを演じたスチュワートと、知的でまさに酋長としての風格を充分に漂わせるコチーズを演じたチャンドラーの芝居が胸を打つ。

理想主義と云ってしまえばそれまでだが、理想を掲げるのが人間ならば、実現させるのも人間であるべき。

ケビン・コスナー主演の『ダンス・ウィズ・ウルブス』が公開される40年も前にこのような作品があったことを我々は埋もれさせてはならない。

53 2022